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【あらすじ】
主人公は大手都市銀行・協立銀行で虎ノ門支店副支店長を務める竹中治夫。協立銀行では長年強い影響力を持ち、人事権を掌握する会長が君臨している。公私混同のワンマン会長は、娘の不倫スキャンダル隠しを画策した。
そんな中竹中は総務部への異動を受ける。「渉外班」と通称されるその実態は、総会屋対策のポストだった。竹中はスキャンダル隠しに加担させられ、心ならずも不正融資に手を貸してしまう。
【感想】
書き下ろし作品で、発刊した年に第一勧業銀行と野村證券で総会屋利益供与事件が発覚し「予見した小説」と言われた。但し高杉良は「ノルマのきつい旧住友、旧三和、旧富士の三行を見据えて書き下ろした」もので、「旧一勧は比較的クリーンな銀行」と認識していたと、非常に「含蓄のある」言葉を述べている。また連載していたらクレームで完成していなかったとして、書き下ろしにしたと、こちらは「本音」で語っている。高杉良が暴いた金融業界の闇はクレームどころか「市民権」を得て、以降第5部まで連載されたが、いずれも「無事」連載を終了している。
第2部の「呪縛」のみは第一勧業銀行の総会屋利益供与事件をモデルにしているが、それ以外の「再生」、「混沌」、「消失」は旧三和銀行を思わせる協立銀行を舞台として、竹中治夫を主人公とした物語になっている。
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*役所広司が名演でした。
第1部は、竹中が不正融資に関わった後も、緊急株主総会に向け、元大物総会屋や企業舎弟などとの折衝を行う。その後営業本部プロジェクト推進部に異動し、大口の不良債権処理を担当するが、回収の家庭で右翼や暴力団から標的にされてしまう。
第3部「再生」は、竹中は更に住宅金融専門会社(住専)の後始末をする機構と対立する役目を担う。責任回避を目論む頭取と、母体行の責任を追及する機構側との間で、竹中は板挟みになっていく。そして竹中は大阪・梅田駅前支店長に転出し、優良企業からも強引な資金回収を行う「貸し剥がし」を指揮することになる。そして本店に戻り広報部長に就くが、次期頭取を巡る人事抗争に竹中も巻き込まれる。
第4部「混沌」は、朝日中央・芙蓉・日本産業の3銀行統合、続いて住之江銀行とさつき銀行が合併(この辺、作者は銀行の名前を考えるのに疲れた感じがする(笑))してメガバンクに再編される中、人事抗争に明け暮れる協立銀行は再編の流れから取り残された。焦る協立銀行は、中位都銀の合併に割り込む。銀行の思惑が絡む中、広報部長である竹中は統合計画をまとめるために奔走する。
第5部「消失」は、協立銀行と東亜銀行が合併し「JFG銀行」が誕生したものの、行内では旧東亜系が冷や飯を食わされる結果となった。竹中は中央から大阪・中ノ島支店長に左遷されるが、主要取引先を救済し、金融庁の査察を乗り越え、東京に戻り常務に昇進する。
一方で金融庁は、金融業界正常化の「生贄」としてJFGをターゲットに絞る。当初は大型増資による事態の打開を計画したが、旧東亜系を冷遇したことが遠因となり、増資先として当てにしていた名古屋財界の協力が得られず、計画は頓挫。そのためJFG信託銀行を四井住之江グループに売却する方針を固めたものの、その後東都光陵銀行がJFGの救済合併に乗り出して、最終的に「消失」する。
第3部以降は、完全に旧三和銀行をモデルにしているが、かつて都市銀行の一員として権勢をふるっていた銀行が、「失われた10年」の中でどのように消えていったかを描いている。その中で主人公の竹中は、バブル崩壊の後始末先として、目立った不良債権の「オールスター」を担当させられて、読んでいて余りにも気の毒と思ったもの。「協立銀行」におけるバブル崩壊を描いているが、これは当初高杉良が述べた通り、複数の銀行における最大公約数のドラマであり、モデルは決して1行ではない。
*最後は「消失」で終わり、様々な人間模様も全て消え去りました。