19:40 追記
安倍元首相が銃撃を受けて亡くなられたニュースが入りました。安倍元首相については多くの毀誉褒貶はありますが、それ以前に民主主義国家として、法治国家として許されないことです。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
どうもカタい話が続きますが、参議院について今回論じないと次回は3年後と思い、まとめました。ご容赦ください。
1 参議院の設立経緯
大日本帝国憲法では、国会は衆議院と貴族院による二院制でした。戦後の日本国憲法によって現在の衆議院と参議院の二院制と決まりましたが、当初のマッカーサー章案では、衆議院のみの一院制にする予定だったそうです。
米国は連邦国家(United States of America)です。下院は人口に比例配分した定数で議員が選出されますが、上院は人口に関係なく独立性の強い各州から2名ずつ選出され、州と連邦の二重構造を反映させて二院制という構成を築いています。対して日本は中央集権制が強く(中央官庁の権限が強く)、都道府県にアメリカほど権限が委譲されていません。そのためGHQは当初一院制を志向したと思われます。
しかし当時の政府は、政権交代の都度法律が変更するため、政情が安定しないと訴えて二院制を推したと言われています。戦前の政党は政友会と民政党の二大政党が選挙の度に政権を交代して、合わせて法律はおろか官僚も総入れ替えとなり、「まるで源平盛表記だ」と言われるほどの交代劇もあったそうで、「政情が安定しない」との理由も切実だったのでしょう。
2 戦後の二院制の役割
ところが戦後日本に二大政党制が育たず(敢えて断言します)、長らく自由民主党を中心とする支配が続いています。そのため参議院も独自性を出そうと最初は色々と苦心しますが、比例代表制導人の頃から「参議院は衆議院のカーボンコピー」と言われ、参議院の独自性は失われていきます。
2005年の郵政国会の時には、衆議院で可決された郵政民営化法案が参議院で否決されるという「独自性」を発揮しましたが、小泉首相は民意を問うため「衆議院」を解散して大勝したことで、参議院は採決を翻して郵政民営化法案が通過することになりました。
その後しばらく与野党の伯仲状態が続き、与党の参議院での過半数割れは「ねじれ国会」となって、「決められない政治」の代名詞となってしまいました。
*山本有三。「真実一路」「路傍の石」などを発表した作家は、参議院議員として「緑風会」の中心的人物となり、戦後の短い期間に参議院の独自性を示した1人です(写真:ウィキベキア)
3 参議院が果たしたものは?
こうして見ていくと、参議院の存在意義はいくら当事者たちが主張しても、説得力が足りません。「衆議院が解散している間に緊急事態が発生した場合、参議院が緊急集会を開ける」という意見もありますが、それは継続している内閣が対処すればいい話ですし、「解散がなく6年間の任期で議員活動に取り組める」という意見に対しては、そのような「成果」を見たためしが残念ながらない、と反論させていただきます。
民主主義とは効率的な意思決定プロセスを阻止し、独裁を制御するプログラムと言えますが、参議院がどれだけその役割を果たしているのか、そして今後果たせるのか、はなはだ疑問です。
また候補者も、タレントや衆議院選挙で落達した前議員が立候補しているのを見ると、政治家及び政党が自ら参議院の存在意義を低めているようにしか思えません。
4 国民が求めるもの
参議院を維持するために、人件費を中心として年間およそ60O億円の予算を計上しています(令和3年度予算案概要より)。また別に参議院選挙の度に波がありますが、1回につき500億円前後の費用が必要とされています。これが多いか少ないか意見があるところでしょう。
しかしこれだけのコストをかけながら、参議院が設置されて75年間の間で、参議院の果たした「成果」が見えていない以上、いくら憲法で決められているから、また「将来の」民主主義のために必要だとか言われても、今後も維持するだけの意義を見出すことはでぎません。
現在は独自性を発揮すれば「ねじれ国会」と呼ばれ、発揮しなければ「カーボンコピー」と呼ばれる存在です。仮に必要な状況になったらその時に改めて考えるべきであって、現在は過去75年間、国民が満足する「成果」を発揮できなかった、もしくは国民に納得させることができなかったと結論すべきです。
参議院議員選挙の投票日が近づいています。参議院に限らず、国民の1票は重いと主張する人がいますが、国民は国民で、その1票に「手ごたえ」を求めています。何度もお願いされて、約束までして相手の言う通りにしたのに、その後は約束を簡単に反故にされて見返りが見られない。そんなことが何度も繰り返されたら、これは誰でも怒る話だと思います。
今後本格的な「参議院廃止論」が行なわれる前に、当選する皆さまはその成果を「今度こそ」国民に提示してもらいたいと思います。
蛇足
配偶者は「投票しないと気分が悪いから。投票先はその時の気分よ」と、投票の案内が届いてすぐに期日前段票に行きました。対して私は選挙公報が届くのを待って、読んでから(消去法で)吟味して投票先を決めて期日前段票をしてきました。
けれども結果、投票先は「気分で」投票した配偶者と全国区も地方区も全く同じでした・・・・