小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

【コラム】 太田光と伝える側の論理 (旧統一教会問題に関連して)

1 太田光の事情 

 昨年(2021年)10月31日に行なわれた衆議院選挙の特番で、相手を顧みない「失礼」な言動で物議を呼んだ爆笑問題太田光。先月行なわれた参議院選挙の特番でもMCに起用されたが、今回は毒舌を封印して「普通の」質問に終始した。

 本人は後日「あの痛ましい事件がなければね」と、直前に起きた安倍元首相の銃撃事件の影響を上げているが、TBSも大分ピリピリしていた様子。視聴率も前回よりもまずまずだったようで、起用したテレビ局も胸をなでおろしたはず。

 

nmukkun.hatenablog.com

*昨年も太田光について投稿しましたが、「続篇」を投稿するとは思いませんでした。

 

2 太田光の意見

 しかしその後世界基督教統一神霊協会(以下「旧統一教会」と記す)に対する報道で、マスコミ各社による(とは言っても、メディアによって濃淡があるのは注意)報道が過熱すると、太田光はその傾向にブレーキをがけている。

 その内容は、第1に日本と欧米の政教分離の「前提」が異なると言うこと。一神教で政治と宗教が密着に関わっている欧米(や中東)の政治と事情が異なるとして、宗教に対しての過熱報道に慎重さを求めている。

 第2に、事件後のマスコミによる旧統一教会への攻撃は、事件を起こした容疑者の行為を是認する可能性があるとして、第2、第3の事件を誘発しかねないと懸念を示している。

 正論と言えば正論であり、別の角度から光を当てる太田光らしい意見とも言えるが、世間の評判は良くない様子。

 旧統一教会と対峠している紀藤正樹弁護士が「第2の山上容疑者が出ることを恐れ、被害と巨悪に目をつぶるということでしょうか」とツイートで「直球の」反論したのを始め、旧統一教会に対する「被害者」を防ぐことを優先すべきとの意見も多い。

 では問題はどこにあるのか。これは旧統一教会の問題と、報道の姿勢が混在していると思われる

  太田光(日刊スポーツ)

 

3 問題の所在

 問題の第1は、旧統一教会によるいわゆる「霊感商法」について。「不安を煽り、印鑑・数珠・多宝塔などを法外な値段で商品を売ったり、不当に高額な金銭などを取る商法 (ウイキペディアより引用)」である。商品の原価と売値が大きく異なるのは、芸術の世界を見ての通りよくあることで、売り手と買い手の問題でもあり難しいが、不安を煽ることで次々と商品を購入させ、それが本人だけでなく家族の悲劇に至らしめることは明らかな問題となる。

 第2は、その高額な購入を求めることが「罪を清算するために日本人は韓国に貢献しなければいけない」(紀藤正樹弁護士の言)という教義で裏付けられている点になる。反共産党の立場から誕生した統一教会ではあるが、同時に日韓併合以降の日本が韓国へ行った行為に対する反日思想も協会側も明らかにしており、その教えを背景に日本から多額の金銭を「徴収」しているところに問題がある。

 第3、そんな旧統一教会の思想原理は、日本の保守思想には相容れないはずなのに、自由民主党を中心とした保守の政治家と密接な関係があること。安倍晋三祖父岸信介はその経歴から、保守の巨魁と言われる存在。確かに旧統一教会は反共を謳っていているが、日本に対してこのような考えを持つ教祖と「釧頚の友」となり、日本への布教を導くことになったのは不思議な話だが、その後も自民党を中心に、深く関与しているのは、どうしても釈然とLない。

 保守派の精神と相反する教義の宗派と歩を同じくするのは、政治家が勉強不足なのか、旧統一教会側が自らの信条を偽って接近しているのか、それとも政治家が単に「票」が欲しいためか。

 最後は、マスコミが旧統一教会と政治家の繋がりの中身を考察せずに、単にかつて何らかの関係があったとだけで、関連した政治家の「数」を報道している点。政治家と旧統一教会との関係を問題視するのは、その繋がりの内容であり、影響であるはず。

 

      

    *岸信介安倍晋三(共にウィキペディアより)

 

 これらの問題は、太田光の言う「政教分離」(と言うよりも「信教の自由」)や、第2,第3の事件の誘発を防ぐために報道を差し控えるほどの優先順位が低い問題とは、捉えられない。

 

4 今後お願いしたいこと

 「法の不遡及」という言葉がある。実行時の行為を、事後に定めた法令によって、遡って違法とししたり、重い刑罰で処罰することを禁止する原則をいう。残念ながら旧統一教会に対してマスコミは何年も表立った報道もせず、私たち国民も問題としなかった中で、今になって政治家が関連のあった、なかった「だけ」で報道するのはいかがなものか。

 私が学生の時は「原理研究会」という名前で、各大学でも活動してきた旧統一教会。その後活動は水面下に移り、また別の新興宗教の問題が大きくなったこともあり、注目を集めなくなってしまった。マスコミが現在になって「旧統一教会は全て悪い」的な報道するのならば、その反省も含めて教義や活動の実態とともに、政治家の繋がりの内容についてより深く調べて報道してもらいたい。

 そして政治家の皆さんは、今までは問題が広がっていなかったので「ある程度」やむを得ないとしても、その活動内容は一般国民よりも知る立場にあり、また知らなければならない立場でもあったはず。今後は旧統一教会に限らず、己の主張する主義主張をもう一度認識した上で、その関係を見直してもらいたい。

 改めて今回を教訓として、「票」によって自分の主義主張を「変節」して国民を裏切ることは、決してしないでほしい