【感想】
東野圭吾はウルトラセブンを偏愛していた。私が初めて発した言葉は「シュワッチ!」だったそうである。その後再放送で流れたウルトラマンシリーズに嵌まり、今でもたまにYouTubeで「交響詩ウルトラセブン」を視聴している。
東野圭吾の中学の学年は、歴代でもダントツの「ワル」が集まり、その中でもワルを集めたクラスの学級委員をさせられたそうである。私の中学は「荒れた」学校で、ガラスは割れ、教室の壁はボコボコ。中学3年ではその荒れたグループの「四天王」が集まる中、学級委員をさせられて大変な思いをした。
東野圭吾の高校は過去に学園紛争があり、制服も廃止されていた。私の高校は以前大学の学園紛争の時に影響を受けてストライキを決行。学生服は廃止されて、中間テストも廃止された。そのため自由は謳歌したが義務は果たさず、結果大学入試は総勢討ち死、4年制の高校と呼ばれていた。
*私もウルトラセブンを偏愛しています。
東野圭吾が著した、作家になるまでの自叙伝。本作品を読むと自分と被るところがかなりあって、笑うに笑えない。でもそれだけ赤裸々に自分の過去を語れる東野圭吾に感心したことを覚えている(但し東野圭吾の母親はこの本を読んで、子育てに失敗したと感じたそうであるww)。またこれが「白夜行」の世界観に繋がったというのだから、人生はあざなえる縄のごとし。
そして「アホ」の意味をちょっと深く理解できた(但し、そのことが人生に寄与したことは、ない)。
「万年直木賞『候補』作家」と呼ばれ、「秘密」でも「白夜行」でも(大人の事情で?)受賞できませんでしたが、2006年6回目の候補作「容疑者Ⅹの献身」でようやく受賞し、そこから「東野圭吾ブーム」が始まります。加賀刑事は成長を続け、ガリレオも長編の主人公となり、20世紀にはなかった「マスカレード」も創造して、旺盛な創作活動を今も続けているのは皆様もご存じの通り。
そして発刊される度に、ほとんど映像化されるポピュラーな作品ばかり。私の感想が入り込む余地はないと考え、最初は「スルー」しようと思いました。けれども1999年に発刊された「白夜行」に至るまでの、「国民作家以前」の作品に焦点を当てて読み直してみると、思いがけない考えが次々と浮かび、そして止まらなくなりました。
東野作品の初期は正直「こなれていない」作風も感じました。その後もあとからデビューした「新本格派」の大学ミステリー研究会出身作家に追い抜かれ、自分の立ち位置に迷いつつ、様々な試みをしながら作品を発表し続けます。その作品群は「国民作家」の世界観を構成するピースの1つ1つのように見えました。「白夜行」に至る様々な試みや蓄積が、直木賞受賞してからもブームに慢心しない、旺盛な創作活動に繋がっていると感じます。
読みやすい文体と身近にもいるような等身大の登場人物。男女の微妙な距離感を図りつつも魅惑的な謎を提示して、その謎を見事に解明する姿勢は、同じ国民作家である村上春樹にも通じると思います。
そんなことで、今後もしばらく「けいごセンセにサヨナラ」はできそうもありません。
(我ながら、ショボいオチになってしまった・・・)
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ほかにも「くくれる」国内作家もいますが、そろそろ国内ミステリー20選にとりかかりたいと思います。ここでは海外ミステリー同様、1作家1作に絞って20選取り上げます。
けれども、国内ミステリーは取り上げる作品が多く、1作家1作に絞っても、20選にくくるのはとてもムリ。
そこで勝手ながら、日本のミステリー界で金字塔となった「メフィスト賞(1996年)」を分水嶺として、本格ミステリーを中心にした「メフィスト賞制定前」と、様々なジャンルの作品が登場した「メフィスト賞制定後」に時代を分けて20選ずつ、計40選を次回から取り上げます!