小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

番外 東西ミステリーベスト100(文藝春秋編) (2014)

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 ミステリー好きの私が、若い時によく「妄想」した「自分のミステリーランキング」。順位は常に変動して、ぐるぐると頭の中を回りながら考えて、眠れない夜の絶好の「時間つぶし」になりました。ところが自分でのランキングを作ると、どうしても一定の作者に偏ってしまいます。

 1985年に発刊された「ベスト100」の第1弾は見逃してしまいましたが、本作品を手にして、妄想はさらに広がりました。またベスト100は到底ムリですが、ベスト10では物足りません。そこで「何でも20選」として、「偏る」作者は20選丸ごと取り上げて、残った(?)作品からは一人1作の縛りをもうけて、眠れない夜に布団の中でベスト20を考えました。

 海外のミステリー100を見ると、本作で取り上げられた20選のうち18作品が綺麗に並んでいて、余りにも特徴がなく恥ずかしい限りです。また残り2作(「悪魔の選択」と「天使と悪魔」)も同じ作家のそれぞれ代表作はランキングされているので、ほぼランキング通りといっていいでしょう。それでも高順位なのに取り上げなかった作品もありますので、その辺で私の「好み」がわかるかと思います。

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 *海外ミステリーのベスト10。「薔薇の名前」は余りにも専門的な内容で、歯が立ちませんでした。

 

 日本のミステリー100を見ても、メフィスト前」に分けた20選はほとんどランクインしています。また外れた作品も1985年にランキングされた作品に含まれていますので、これはもう「名作は時代を超えて生き残るもの」と思うことにしました。

 ところがメフィスト後」となると、選出時期の違いもありますが、だいぶ本作品のランキングと異なりました。以前は唯一の権威だった江戸川乱歩賞から、メフィスト賞及びそれ以前から「新本格派」の作家が活躍したことにより、ミステリーの発想に制約がなくなりました。それによって選択の幅が広がり、「万人に共通する作品」が以前よりも限られてきたと思います。

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 *国内ミステリーベスト10。横溝正史松本清張のベスト作品は、私と見解が分かれました。

 

 ミステリーには未だに様々な可能性があります。その可能性にチャレンジして創作を続ける作家の皆様に感謝と今後の更なる活躍を祈念しつつ、ミステリー部門の見事な入門書を、本書が果たした意義の大きさと合わせて、この場で紹介させていただきます。

 

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 ・・・・と、締めの挨拶のようになってしまいましたが、ミステリー編にはまだ続きがあります。今まで敢えて取り上げなかったジャンル。それは1990年頃から急速に台頭した警察小説。こちらも今、質・量ともに隆盛を誇っていますので、ミステリーのランキングとは別に取り上げることにしました。

 戦後間もなくの時代、「社会派」の刑事が足を棒にして行なう捜査に独特のカンを織り交ぜて事件を解決する「刑事もの」から、組織力と科学捜査を交えつつも、刑事の個性を浮き彫りにする姿に発展した警察小説。

 特に警察小説はチームとして複数の登場人物が固定される特性を生かして、シリーズ物として量産されています。そのため全ての作品を取り上げたらそれこそ紹介しきれません。そこでこの場ではシリーズ物は1カウントとし、そのシリーズ全体もしくは代表作1作を候補として、新たに20「シリーズ」を取り上げることにしました。

 そして警察小説において膨大な量を、水準以上の質を持って発刊し続けている驚異的な2人の作家、今野敏堂場瞬一。この2人だけでも優に200作品を超えてしまいますので、特別今野 敏・堂場 瞬一10&10」として、おのおの10「シリーズ」をまとめて次回から取り上げさせていただきます。