小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

琴平荘の中華そば

 7月6日の投稿(江戸時代に住みたい場所「庄内藩」)で鶴岡市に触れましたが、同じ鶴岡市の中でも市街地からは程遠い、新潟県に近い交通が不便な場所に「琴平荘」があります。

  本業は旅館。但し冬場は客が少ないので10月から5月まで限定でラーメン店を開業している幻の中華そば。その旅館で作る中華そばが次第に評判を呼んで、期間限定と交通に不便な場所もあってその評判は「飢餓感」へと変わり、ついにはお取り寄せグルメで人気No.1を誇りました。

 そんな不便な場所でも(ラーメン店の)営業期間中は行列必死。先日、丁度期限間に所用で近くまで行くことになったので、足を延ばしてその評判を確かめに行きました。

 お店(?:旅館です)に到着したのは1時前。平日というのに30人待ちだったのにはびっくり! 折角の待ち時間なので、お店の裏手に回って日本海を眺める。奇岩も海辺にそびえ立っていて、日本海の荒波もあり見事な風景でした。

 

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 庄内地方は「武家の町」鶴岡市と、日本有数の富豪であった本間家が構えていた「商業の町」酒田市が両立していて、部外者からはわからないが競争意識が激しくどうも仲が悪いようです。ラーメンでも当初は酒田市のラーメンが有名で、鶴岡市のラーメンは下にみられていた時期があったといいます。そのため琴平荘の店主は、ラーメン好きから鶴岡市独自のラーメンを目指して研究を重ね、麺も自家製麺にこだわって1杯のラーメンを完成させたそうです。

 いよいよ順番が回ってきます。簡易旅館の大食堂をイメージさせる店舗のテーブルに座ります。

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 私は「こってり(油多め)」を選びましたが、見た目は「あっさり」と変わりないように見えます。庄内名物のトビウオ(アゴ)で取ったダシが効いてシンプルに感じますが、味わうとベース音のように流れる比内地鶏を使った味わいも魚介系の味と複雑に絡み合い、奥深い味わいが残ります。

 自慢の自家製麺は中太でシコシコとした私好み。トッピングのチャーシューも香ばしくもジューシーに仕上がっていて、食べ応えがあります。メンマは極太だが柔らかくかつシャキシャキした触感残しつつ、うま味も吸っていて好みの味わい。そしてビックリしたのが海苔。磯の香りが強く出ているが、決してスープを邪魔せずに、アゴダシスープとよくマッチしています。

 

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 1つ1つが特別な味ではないけど何とも味わい深く、そしてそれが一緒になるとお互いの特徴を消しあうのではなく相乗効果で1つの味にまとめ上がっています。若い頃は「ガツン」とした味わいばかり食べて、シンプルなラーメンは敬遠気味でしたが、最近はこのような味わいも求めるようになりました。

 店主は掛神淳さんで私と同世代。祖母が始めた簡易民宿が立ち行かなくなり、特に閑散期の冬場を凌ぐために始めた、自分が好きなラーメン店。全てがうまくはいかないだろうが、恵まれない(失礼!)地域の店でも、情熱(昨年1月、情熱大陸で放送された)と真摯に向かい合う態度で道は開ける、と信じたくなる一杯でした。

 今は夏季で本業の旅館を行っているため休業中。10月になったらまた行列ができるのでしょうね。ごちそうさまでした。

 

(敢えて、やや広めの地図にしてみました。この時期は臨時休業ですね) 

 

  お寿司の次はラーメン。それにしても、メタボとラーメンは親和性が高い(笑)。