小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

【コラム】 偽綸旨 このごろ都に 流行るもの

今週のお題「575」

 タイトルは、武家政権打倒を果たした後醍醐天皇が行った建武の新政が、混乱の極みに達したことを風刺する「二条河原の落書」から取ったもの(順番はちょっと変えました)。綸旨(りんじ)とは天皇の言葉(綸言)の意味を表わし、当時は部下(蔵人所など)が天皇の意向に構わずに乱用して、混乱を招いた。翌年、後醍醐天皇は京都から追われることになる。

 ここで偽綸旨は部下が勝手に発しているが、最近はトップ自ら前言が「偽」になる発言をしている。

 

1 問題の源流

 そのことを特に強く感じるようになったのは、いわゆる「モリ・カケ問題」からか。日本では久しぶりの長期政権が成立したことによって、それまでは「権勢」対して頭をかがめてやり過ごしてきた官僚が、そうはいかなくなったため、「忖度」という言葉に象徴されるように政権に「すり寄る」ようになった。

 森友学園問題で、「鉄面皮」の答弁で政権を守った佐川理財局長を、政権は論功行賞的に国税庁長官に押し上げる。就任の記者会見を拒否し続けたにもかかわらず「適材適所」と答弁してきた政府側が、近畿財務局所属でこの問題で苦しんだと思われる局員が自殺して佐川氏が国税庁長官を辞任すると、打って変わったように佐川氏を非難する姿勢に変わった。

 法務面で「政権の守護神」となった黒川東京地検検事長検事総長にしたいがために(政権側は明言していないが)、検事の定年制を「本来の検察庁法ではなく」国家公務員法を改正することによって定年延長してまで、検察庁内の規定の方針を覆そうとした。ところが賭け麻雀が発覚して黒川検事長が辞任すると、黒川氏の問題とは無関係と語っていた定年延長制の法案も取り下げることになる。

 

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 (写真:時事通信社

 

2 問題の継承

 安倍政権末期は明らかに長期政権の弊害が出ていて、このような問題の発生と始末に国民が飽き飽きとした。そのため次の管政権誕生には期待を寄せて、当初は「まるで民主党政権が誕生した時のように」高い支持率を集める。ところが前言を翻す発言は継承されていく。

 今年4月に発出された3回目の緊急事態宣言。東京、大阪、兵庫、京都の4都府県を対象に、4月25日から5月11日までの17日間と期間が設けられていた。その時は「短期で集中的にコロナを根絶するため」と国民に説明していたが、5月末まで延長する際には、それまでの緊急事態宣言の効果について問われると「人の流れは抑制された」と回答している。人の流れの抑制は問題の一部であり、当初の目的ではないはず。

 また緊急事態宣言を発出する権限は政府にあるが、管総理はその発出について「専門家の意見を聞いて判断」とよくコメントしていた。しかし尾身会長(基本的対処方針分科会)の意見を参考にしているとは思えない。最近は尾身会長も政府に「忖度」するのに疲れたのか、はたまた専門家としての矜持があるのか、政府の意向に沿わない発言になっている。専門家の意見と政治的判断が異なるのは当然と思うが、「なぜそうした」の部分が全く伝わってこない。

 

3 問題の拡大

 私自身は、コロナ対策にしても、オリンピック・パラリンピック(以下、「オリンピック」とする)の開催・中止・延期についても正解はないと思っているので、強いこだわりはない。コロナ対策は国民の自制心を期待しながら、ロックダウン(都市封鎖)のような強い規制をせずに、経済の破綻回避とコロナ対策をギリギリの線で両立しつつ、ワクチンの波及で徐々にソフトランディングできれば、それも1つの手と思う。またオリンピックも、中止や延期でもいいが、開催するなら対策とワクチンの波及でコロナの影響を最小限のとどめることができれば、それで構わないと思っている(IOCの関係などは契約内容も不明なためスルーします)。

 ただ、政府側はそのような発信を極力控えているように思える。総理の周辺が高度な計算式を使って、その場で極力非難をされないようなレトリックを駆使する回答を作り上げるように感じるために「心がこもっておらず」、次の機会には前言を翻す答弁をする結果に陥っているように思える。

 そして極めつけは「私は主催者ではない」。6月7日「国会で」開催、中止、延期の可能性を問われての回答。これは事実であるが「真実」ではなく、今までの経緯からも国会で総理が答弁すべき言葉とは思えない。その主催者でないと主張した総理が、G7サミットでは、「各国首脳に」オリンピック成功の支援を呼びかけている。私には理解不能である。

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 (写真:時事通信社

 

4 返す刀で・・・・

 衆議院は今秋任期満了となり、近々の総選挙は免れない。管政権がこのような対応で支持率も急落しているので、自民党が惨敗かと思われるが、そう簡単ではない(二階幹事長については今回スルーします)。

 枝野立憲民主党代表は、3月に大阪と宮城でコロナの流行が再発したのは知事の責任が重いと非難し、大阪の吉村知事に対しては「このザマ」とまで発言した。宮城県は「Go to Eat」の食事券が再発を招き、知事の判断ミスと非難した。3月11日は東日本大震災から10年を迎えた。コロナで規模縮小しながらも式典が開催され、東京からも多数の出席者が来仙しているが、そのことは触れていない。

 大阪府に至っては吉村知事が激高。国会議員として立憲民主党はコロナにどう対処したか疑い、また同じくコロナが流行している兵庫や沖縄は知事が反維新や旧民主のためか非難をせず「コロナを政争に利用している」と攻撃された。これはコロナ対策に汗を流し表に出て情報を発信している吉村知事と、(実際には効果的なことをしているかもしれないが)コロナ対策では表立った活躍が見えない野党第一党の党首では、明らかに枝野代表の分が悪い。

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(写真:時事通信社

  また6月5日の日本テレビ系の番組「ウェークアップ」で、枝野代表はオリンピックについて「東京首都直下地震が起こったら(中略)どこか超大国が突然、戦争を始めたりしたらできないでしょ?今の世界的なパンデミックと日本の感染状況は、そうしたものと比較ができる状況ではないですか?」と言いながらも、「立憲民主党は開催には一切、協力しないっていうことですか?」と問われると、枝野氏は「いえ、そんなことはありません。私は開催できればしたい、と繰り返し申し上げています」と述べた。

 私には理解不能である。そして昨日になり延期か中止を求める意見を発表している。

 ・・・・私も含めて、みんなストレスが溜まっているのかなぁ。