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【あらすじ】
ライツヴィルから届いた2通の手紙。差出人のないその手紙には、ライツヴィルで2人の人間が死に、1人の人間が行方不明になったという新聞記事の切り抜きが入っていた。死んだ男たちは病死と自殺で、特に事件性はないと思われた。とは言え、この手紙に興味をそそられるエラリ―。
そこに奇妙な娘がやってくる。その女性は、新聞記事にあった「行方不明の男」トム・アンダースンの娘リーマだった。リーマは、父親はすでに死んでいると信じていて、はるばるニューヨークまで「父になにがあったのか調べてほしい」と依頼に来たのだ。この女性に興味をそそられるエラリー。
再度ライツヴィルを訪れることになるエラリー。そこでは、医者のトッド博士が、マッケイビイ(金持)の病死と、ハート(貧乏人)の自殺により、莫大な財産を得ていた。その財産をトッド博士は自分のためには使わず、小児科の病棟を建てる計画を立て、恵まれない人にお金を援助する生活をしている。
そして殺人が起きる。「金持、貧乏人、乞食、泥棒、医者、弁護士、商人、所長(チーフ)」と数え歌による見立てで、今度は乞食、泥棒と殺害される。そして医者のトッド博士も殺され、弁護士のホルダーフィールド、商人のワルド―と殺害され、最後には事件を突き止めようと動く「所長」エラリーの命が狙われることになる。
【感想】
クイーンを読み始めたころ、同時に横溝正史ブームが起こり、横溝作品も並行して読み始めた。そして思った。「見立て殺人は映える!(何て不謹慎な・・・)」 殺人の目的とは外れてしまうのは承知の上で、見立て殺人を見ただけで、当時は得した気分になったもの。
とは言え、冷静に考えると見立て殺人にはリスク(時間・証拠・犯人の絞り込みなど)が生じるので、そのリスクを上回るだけの理由付けがないと、話が浮いてしまう欠点がある。
本作品で使われる「見立て」は、理由付けはあまり無理がなく、またちょっとひねった(?)形となって、うまく使われたと思う。犯人も、最初は事件を支配していたが、予想もしない方向に反転していく。その納め方も見事。とは言え、見立ての趣向にこだわりすぎの感も否めないが…
そんな中で、父とともに掘っ立て小屋で世捨て人のような暮らしをしていたリーマの存在感は光る。世間のことはろくに知らず、鳥や動物たちと会話できるという「浮世離れ」した女性。リーマのおかげで、「十日間の不思議」のような重苦しい雰囲気からは多少息が抜ける。
しかし、またしてもエラリーは、ライツヴィルで犯人に利用されてしまった。「十日間の不思議」と同じように、「エラリーならこのヒントを繋げて、こう推理してくれるだろう」と「期待」されて。
そしてまんまとまた同じ罠にはまってしまう。やはりエラリーは、ライツヴィルでは目立つ存在なのだろうか。
でも、「エラリー研究家」がライツヴィルには、果たして何人いるのやら・・・