小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

好きな「ゴルゴ13」10選

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

 日本の劇画を築いたさいとう・たかをさんが亡くなりました。マンガが害毒とされた時代に、子供で卒業するマンガを大人まで広げた功績は大きく、手塚治虫とともに日本のマンガ界を担った存在と思えます。そして50年以上連載が続いているゴルゴ13。誰もが1度は目にしたと思われ、現在に至るまでエピソードで600を超える分量となっています。

 その中から10選は困難を伴う作業ですが、追悼の意を込めて自分勝手に選ばせて頂きました。なお今回は、順番は発表順です。

                                                                                                                   

第6話 白夜は愛のうめき (1969) 

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 女は飛行機で1人の男と隣り合わせになる。機体にトラブルが生じて、激震に襲われた女は思わず男に抱きつく。無事飛行機を降りた後、白夜の夜の中で女は男とベッドを共にする。男は立ち去るが、女は密かに男の後をつけていき、そこで女が見たのは、狙撃を終えたばかりのゴルゴの姿であった。

 当初10話で終わる予定だった初期の作品。スナイパーという男が見せる男女の姿を描いたテーマの端緒。まだ「ゴルゴ13」は完成しておらず、犯行現場を見られるミスを犯してしまいます。

                                                                                                                   

第37話 AT PIN-HOLE! (1971)

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  ハイジヤックが発生して犯人は機首に立てこもる。旅客機には近づけず、狙撃で仕留めるより方法はないと判断したCIAは、ゴルゴを超法規的に釈放させ、ハイジャッカーの狙撃を依頼する。デイブ・マッカートニーに超特急で作らせたカスタム狙撃銃を携えて空港へ乗り込んだゴルゴは、1キロを超える「針の穴」を撃ち抜く奇跡の超長距離狙撃に挑む。

 ゴルゴが見せる不可能狙撃シリーズの初期の名作。また名脇役デイブ・マッカートニーが初登場します。

 

第59話 日本人・東研作 (1971)             

 国際的ジヤーナリストのマンディ・ワシントンは、東(あずま)研作なる人物がゴルゴではないかと推測し、その男の過去の調査を進める。そして東研作の思わぬ運命を知り、マンディ・ワシントンも危機に陥る。東研作を辿りながらも様々な思惑が錯綜して、それが最後につながるところも興味深い。                             

  ゴルゴ13のルーツ編の最初でもある人気作品。「ルーツ編」は全て面白いのですが、ここで取り上げるのは本作品と敢えてもう1作に留めました。また印象的な脇役、マンディ・ワシンドンは「ミステリーの女王」でも登場します。

                                                                                                                   

第137話 軌道上狙撃(SNIPE IN THE ORBIT) (1978)

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 米国の人エ衛星が損石群に激実し、制御不能になる。米大統領の依頼を受けたゴルゴは、衛星の軌道を狙撃によって修正するよう依頼される。ゴルゴはデイヴを呼び寄せMI6を無重力空間で使用できるように改造させ、訓練を受ける間もなく宇宙空間での狙撃を試みる。

 ゴルゴの「不可能狙撃」の最たるものと言ってもいい作品。宇宙空間の描き方が見事な上、ストーリーも米軍将校の偏見が思いもかけない結果を生んで、「宇宙からの脱出」もテーマになります。

                                                                                                                   

第176話 穀物戦争・蛸榔の斧 (1981) 

 食糧自給率が著しく低い日本は、敷物メジヤーからの輸入に依存していた。そうした日本の状況を危惧 した商社マン・藤堂佑一は、メジャーを頼らずに直接アメリカの穀物市場に介入するべく挑戦を試みる。

  敷物メジヤーの虎の尾を踏んでしまった藤堂にしっぺ返しが起きます。しかし第180話「汚れた金(ポリューテッド・ゴールド)」ではメジヤーに一泡吹かせ、また自分が理想とする農場を経営するための資金稼ぎのためにもゴルゴ13の力を借りて、相場での大勝負を仕掛けます。

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第192話 バンプ・ザ・ガリバー (1983)

 日本のコンピュータ会社「旭製作所」の産業機密が、KGBの手によってFBIに持ち速まれた。FBIは、日ソが手を組んだのではと警戒し、調査を開始する。しかし目的は日本の青年官僚たちとKGB が、自分たちに恥をかかせた元FBI防諜室のエッカードに、恥をかかせる為に仕組まれた罠だった。

 IBM産業スパイ事件を題材にとった作品。前作「穀物我争」と共に、当時は日本が経済で世界に進出して、日本脅威論が出回っていた時代で、今思うと懐かしい時代です。

 

第213話 2万5千年の荒野 (1984

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 カリフオルニア州郊外の原子力発電所でトラブルが発生。解決には原子炉に充満する蒸気を逃がさなければならないが、肝心の逃がし弁は職員のミスで壊れていた。もし原子炉が爆発すればロサンゼルスが2万5千年の死の街になる。偶然居会わせたゴルゴにプラントの設計者は蒸気を逃がすためにサージ管を狙撃で撃ち抜くよう依頼する。だが、狙撃場所はメルトダウン寸前の原発の中だった。

   チェルノブイリ原発事故をきっかげに生まれた作品だが、東日本震災での福島原発事故の際、コメンテーターの教科書とされるほど専門知識が詰め込まれた作品。そして共通するのはヒューマンエラー。

 

第262話 すべて人民のもの (1988)  

 スイスのプライベートバンクに1人のロシア人が現れた。自らをニコライ二世の孫だと主張し、かつてロシア革命間際に預けられた旧ロマノフ王家の隠し財産の全額引き渡しを要求する。ソ連政府の承認もあり、真大なその遺産がソ連に渡れば、東西の富のバランスが逆転してしまう。相続人を証明するメダルはもう一枚存在し、その調査を頼まれたフェイスは、ロマソフ家の謎の第五皇女ドーラと、その息子である日系ロシア人「グレゴリー・皇士東郷=口マノフ」の存在を知ることになる。

  「ルーツ編」でもう1つ。ロマノフ家の生き残りが話題になった頃で、それがゴルゴと結びついて壮大なスケールの物語となって結実しました。

 なお下の記事は、同じくロマノフ王朝の生き残りをテーマにした作品です。

 

nmukkun.hatenablog.com

 

 

第459話 世界的大流行パンデミック (2006) 

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 スペイン風邪以来の恐慌が危惧される鳥インフルエンザ。薬品はスイスの製薬が開発した「タミール」以外になかったが、ブラジルの野党議員は自身の製薬会社でコピー薬を大量生産し、これを認めさせようとする。この野党議員に脅威を覚えた大統領は、ゴルゴに事故死に見える形での暗殺を依頼する。

 本作品も現在のコロナ禍を見越したような作品。また他にもエボラ出血熱などの感染症をテーマにした作品も多く、「医療編」ともいうべきテーマの1つ。

 

第500話 史上初の狙撃者  (The first sniper)  (2010)                                                   

 戦国時代、金ケ崎の戦い直後に織田信長を狙った杉谷善住坊は、世界最古のスナイパーと言われる。ゴルゴは善住坊を先祖に持つ杉谷俊一から狙撃の依頼を受けるものの、善住坊の遺した火縄銃を使う条件がついていた。ライフリングが切られておらず、射程距離も短い火縄銃を用いて標的を仕留めるという困難な依頼は、なぜ善住坊が狙撃を失敗したか、という謎を解明するものでもあった。 

  「逆説の日本史」を連載しているミステリ一作家、井沢元彦杉谷善住坊を世界最初のスナイパーと指摘していて、そのことが縁で原作を担当した作品。そして400年前に狙撃が失敗した理由が、ゴルゴの手によって明らかにされます。

 

   f:id:nmukkun:20211026195504j:plain ©さいとう・たかを東映

高倉健が演じるゴルゴ13。さいとう・たかをは最初は高倉健をイメージしてゴルゴ13を描いたと言う。

 

 時代の先を行くゴルゴ13。後から振り返って改めてその存在を認識する作品が何と多いことか・・・・

はてなのお題で、ルパン三世と一緒に書いたのですが、タイミングがズレて期限ギリギリになってしまいました)