小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

素晴らしきシカゴ

今週のお題「好きな街」

 

 以前のお題に「住みたい場所」がありましたが、今度は「好きな街」。せっかくなので今回は「好きな」に特化した街を。

 海外旅行はここしばらくご無沙汰ですが、20世紀の世紀末にシカゴに行く機会がありました。東海岸でも西海岸でもなく、シカゴ。海外旅行には不慣れな私の先入観は「アル・カポネ」の町。治安が悪いのかな、と不安な気持ちを持ちました。

 アメリカ大陸のど真ん中にデーンと構える大都市シカゴ。海に遠く飛行機から眺めても、陸地が続く中、海とも見えるミシガン湖に隣接して、広大な大陸の交通の要所として発展したのがわかります。

 「なぜか」高層ビルが狭い地域に密接して乱立していて、その理由が全く畑違いの、島田荘司著「摩天楼の怪人」で教えて貰うとは思いませんでした。またトリビューンタワーやコーンタワー(マリーナシティー)など、特徴のあるビルも存在感を受けます。対してダウンタウンは日本に比べて家の仕切りが厳重でしたが、子供たちが遊んだりする風景も普通に見られました。カポネの時代の治安は、戦後かなり払拭されたと聞いています。

 

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 町には「ループ」と呼ばれる高架鉄道が19世紀から運営されて、歴史を感じます。歴史というと現在は鈴木誠也が所属しているシカゴカブスの「リグレーフィールド」はメジャー最古の野球場として独特の雰囲気を醸しだし、私も観戦してサミーソーサのホームランを見ることができました。また当時全盛とも言えるマイケル・ジョーダンのレストランで食事をしたことも思い出です(味はちょっと・・・・)。

 

 シカゴには伝統と斬新、貧富などが極端に混在します。そんな中私が愛する小説、ジェフリー・アーチャーの「ロスノフスキ家の娘」もシカゴを舞台としています。傑作「ケインとアベル」では、ポーランドの移民から徒手空拳で一代でホテル王に成り上がった大富豪アベル・ロスノフスキですが、本作品はその娘フロレンティナの物語。勉強に秀でて、大学卒業後は起業家として頭角を現わし、父の宿敵「ケイン」の息子と恋をして、そして政治家となり大統領をめざす「サーガ」と呼ばれる一代記です。

 

   

 

 幼い時からイギリス人で謹厳な家庭教師ミス・トレッドゴールドが住み込みで、学問だけでなく私生活や道徳まで教え、多くの影響を受けながらフロレンティナは成長していきます。その謹厳なトレッドゴールドが週に1日の休みにいつも外出していくのを、幼いフロレンティナがこっそりと後を追いかけるシーンが印象的です。大富豪のロスノフスキ家に対して庶民的なトレッドゴールド。普段フロレンティナが使わないループを使ってダウンタウンを縫って行く先は、なんとゴルフ場。ちょっと違和感を覚える謹厳な家庭教師の唯一の趣味は、フロレンティナの生涯の趣味にもなり、そしてラストシーンでも生かされます。

 幼い時から大学入学まで一緒に生活して、文字通り手塩にかけて育てたフロレンティナとミス・トレッドゴールドが別れるシーンは感動的です。そしてこの2人の生涯が交錯した舞台として、伝統と斬新、貧富が混在するシカゴという町がとても映えていることを、改めて感じます。

 シカゴを地盤とするイリノイ州選出の民主党国会議員となったフロレンティナは、「イリノイ州の看板娘」のキャッチフレーズで、女性初の大統領を目指します。そして現実は、バラク・オバマイリノイ州選出の民主党国会議員として、アフリカ系初の大統領となりました。また一代で財を成した男の娘で、独自にブランドを立ちあげた女性として、イヴァンカ・トランプと重ね合せてしまいます。

 

  

 

 「素晴らしきシカゴ」。このタイトルは(得意の?)ゴルゴ13にある作品です。銀行強盗で捕まった男が仮釈放で戻ってきたとき、町も恋人も変わったことを歎き、古き良き時代を思い返します。これもシカゴの1つのイメージなんでしょう。

 治安が悪いイメージが強いシカゴ。そのためか、ゴルゴ13でも何度か登場します。