小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

「いまなら。」奈良へ行こう! PART2

 2日目の最後は東大寺大仏殿と春日大社へ。配偶者は東大寺の大仏を見るのは初めてで、私が40年以上前に見たときと同じようにビックリ。雨の中で記念撮影をする修学旅行生がちょっと可哀想。そして春日大社はちょうどNHKで20年に一度の「式年造替」を迎える番組が流されていたこともあり、興味津々。1000年王朝を開いた藤原氏氏神を祀る神社でもあり、歴史好きからすると欠かせないスポットです。

 横目でシカさんと再会しながら(配偶者は「シカはもうお腹いっぱい」だと)これで2日目の観光が終了。「いまなら。」でいただいた地域クーポン券は、部屋飲みが好きな配偶者の意向もあり、地元名産「柿の葉すし」と地元の酒にありがたく変身。ホテルの部屋で咀嚼すると、配偶者は疲れもあったのか、そのままグウグウと寝てしまいました。

 配偶者が寝ているとなりで、私はW杯の日本対ドイツ戦を観戦。前半は力の差が歴然としていましたが、後半に入ると日本が歯車が回り出して、見違えるような動きに。前半と後半でシステムを変えて相手を撹乱させて、アトランタオリンピックの日本対ブラジル戦のように、キーパーがスーパーセーブを繰り返し、試合終了に近いタイミングで決勝戦を奪えたのは、勝つにはこれしかない、という試合展開。

 それでもドイツは前回W杯で初戦に敗れて決勝トーナメントに進出できない「屈辱」があったため、今回こそはと気合いを入れて試合に臨んだはず。よくよく考えれば、ドイツはW杯で前回大会の最終相手韓国と今回の日本に、2連敗したことになるのね(それにしても、コスタリカ戦はイタすぎる)。

 

 ・・・・と、これは旅行のブログ。翌日はコーフンして寝つけなかった、睡眠不足の私のアタマの中とは対照的な青空が広がり、今回の私の目的地の1つ、薬師寺へ。薬師寺東塔は外にあるので、敢えて前日の雨の日の予定を変えて、青空の下で観ることができて感激でした。現代になって新たに創建された、色鮮やかな西塔とのコントラストも見事で、これまた時を忘れるほど見入ってしまいます。

 

   *現在はスマホの待ち受けになりました。

 

 ここで奈良はおしまい。京都好きな配偶者の「ちょっとは京都も感じたい」とのリクエストに応えるべく、昼前から京都へ移動。いままで何度も京都を訪問しましたが、なかなか行けなかった下鴨神社上賀茂神社(カモの字が違うことを初めて知った)に絞ってご参拝となりました。下鴨神社は街中にあり、紅葉鮮やかでまた七五三の子供も多く華やかな雰囲気。対して上賀茂神社は清廉な雰囲気を感じて、これまた神社としての霊験あらたかな印象を受けます。

 

    *鳥居と紅葉が鮮やかな下鴨神社

 

 と、ここらで京都では個人的なイメージの強い「乱暴なバスの運転」に加え、寝不足に大勢の観光客によるすし詰め状態も重なり、だんだんとグロッキー状態に。部屋飲みが好きな配偶者は、お酒は忘れないものの、夫婦揃って生野菜と魚料理が食べたくなり(年を取ったものと痛感しました)、デパ地下で調達して早々にホテルに戻りました。

 最終日は旅先にもかかわらず、夫婦揃って8時間睡眠(コドモか!)のあと、せっかくだから都会のデパートに行きたい配偶者のリクエストにまたまた応えます。当初は大阪駅付近と思ったけど、急遽予定変更して、前回大阪に行ったときは完成していなかったあべのハルカスへ。展望台へと登り、高い所から見る大阪の眺望を堪能しました。これでわてら夫婦は、スカイツリー、東京タワー、横浜ランドマークタワーと、上位4つの高い建物を制覇したことに。そして見つけたキャラの「あべのべあ」は私とそっくりと言って配偶者は大ウケ・・・・

 

   *私にそっくり? あべのべあ(近鉄不動産HPより)

 

 同じ建物にある近鉄百貨店を見て、大阪らしくたこ焼きとイカ焼きのセットを食し、関西空港へと行って無事帰宅。家に帰るとやっぱり落ち着くという、世間ありきたりの感想を抱きました。

 今回は私の目的であった興福寺阿修羅像、法隆寺百済観音像、そして薬師寺東塔などの国宝の数々や春日大社など世界遺産をピンポイントで見ることができて大満足。定年になって時間ができたら、今度はのんびりと明日香付近を散策したいと感じました。

 

私   「ところで、おかーちゃんは何が一番良かった?」

配偶者 「  シカ!

 

   つぶらなヒトミで見つめれば、観光客を魅了するのはちょろいもの。

 

7 小説 半導体戦争 杉田 望 (1987)

【あらすじ】

 アメリカの半導体メーカー第3位のモトラム社が倒産した。経営者はその原因を、日本企業によるカルテル行為として、アメリカの反トラスト法で認められている「3倍額賠償」の請求を準備しているという情報が通産省に入る。

 通産省キャリアでNY・ジェトロに転出して産業調査員を務めている木原シオリは、アメリカ側との交渉を行う一員として、日米の「半導体戦争」に巻き込まれる。

 

【あらすじ】

 半導体は大きくRAM( Random Access Memory )とROM( Read Only Memory )に分けられる。その内容は英語の意味通りだが、「文系おじさん」が一番わかりやすかった説明は、井澤元彦の「逆説の日本史」に書かれた、メソポタミア文明における楔形文字の話。棒で引っかいて記す粘土板がRAMで、記録が不要になれば、粘土をこねて新たな情報を書き込む(粘土板の広さが情報量を示し「メモリ」になる)。そして保管が必要になれば粘土板を焼く。これがROM(読み出しのみ可能)になる。

 パンチカードで記録の管理をすることから始まり(これは10進法)、リレー式、真空管トランジスタ、そして集積回路と進化を遂げながら、ON・OFF信号を「0」と「1」の2進法で表わして情報を伝達、保管していくのが半導体技術(かなり「乱暴」な説明はご容赦)。1960年代後半から日本では「電卓戦争」が始まる。数十にも及ぶメーカーが一攫千金を目指して短期間に競争を繰り広げ、最終的には価格は1000円を割り込み、名刺サイズまで縮小された。

 

   楔形文字ウィキペディアより)

 

 その過程で1980年代になると、日本の半導体技術はアメリかの生産能力を追い抜いてしまう。最先端の技術である半導体産業も、(当時は)労働集約型産業。低賃金の労働者を集めて、「カイゼン」によって歩留まりを下げて、良質で競争力の高い製品を作ることに成功した。「産業のコメ」と言われた半導体も、日米貿易摩擦の主要産業となる。

 本作品は、倒産したアメリカの半導体メーカーが日本の半導体企業に対して、反トラスト法(独占禁止法の関連法案3法の総称)に違反していると訴える。アメリカはカルテルやボイコットなど「フェアでない」行為は厳しい姿勢で臨み、ペナルティも日本と比べると「想像を絶するほど」重い。貿易摩擦アメリカは「法廷」というフィールドで対決を迫りつつも、テーブルの下では秘密協定を持ち出す。ポーカー」のような巧みな駆け引きをして日本を翻弄する

 対して日本は通産省が相手となって、アメリカの「ブラフ」を見極めようとする。ベッド(賭け金)は日本半導体メーカーの未来。ところが日本はブラフとポーカーフェイスを駆使する技量も力もなく、また「トラスト」を疑われるような価格の「話し合い」も判明する。日本国内では「民」に君臨する通産省も、「足して二で割る」秘密協定で、アメリカが当初描いていた落としどころで妥結する。先に挙げた「白昼の迷路」はIBMによる産業スパイ事件だが、この時期はジャパン・バッシングが盛んに叫ばれていた。

 そんな事件を、大学を卒業して約10年、女子の同級生5人が絡む。通産省キャリアで貿易摩擦の交渉を補佐し情報を収集する役割を担う木原シオリ。政府系金融機関シンクタンクに、ゼミ教授の推薦で入所した久保理恵。新聞記者として通産省キャリアに食い込む裕美。大蔵省の役人と結婚するも、夫が自殺してしまった美沙子。そして半導体メーカーでもある日興製作所に就職し、未来を嘱望されている技術者と結婚して子供2人の久美子(これだけ進路がバラバラで、一体何を専攻したゼミなんだ?)

 前年に法制化された男女雇用機会均等法も意識して、それぞれが違った価値観を持って生きていく様子も描いている。専業主婦となった2人が死別と離婚となるのは残念だが、不倫するもの、転職するものもあり。5人が「帝国ホテルスイート」を使って開くパーティーは、バズーカートークがさく裂しそうで楽しそう(笑)。

 

    半導体の歴史(日立ハイテクHPより)

 

「いまなら。」奈良へ行こう! PART1

 コロナ禍の行動制限もなくなり、久しぶりに旅行したいねと気分が一致したわてら夫婦。暑いのは苦手なわたしと紫外線が苦手な配偶者は、紅葉の時期に旅行に行こうとなりました。

 ではどこへ? 私は昨年ブログで取り上げた「好きな日本の国宝10選」を作成した時に、奈良へ行きたくなりました。京都は配偶者が好きで、また行きやすいこともあり何度もお邪魔していますが、奈良は修学旅行以来パッタリ。会社員でお休みは三泊四日程度のため、スケジュール的にも行きづらかったことも、今まで敬遠してきた理由になっていました。

 そんな気持ちを配偶者に伝えると、配偶者は「シカが見たい」とぽつり。黒光りするGも手づかみできる配偶者ですが、毛皮系(?)の動物は、幼い時の亡きがらを見たトラウマがあるようで苦手。それでも「ワイルドライフ」のような動物系の番組は良く見ていて、以前シカのツノを切る作業を見て、興味を持った様子でした(興味を持つきっかけがよくワカラんが)。

 まだ全国割が発表する前に予約した交通機関とホテルでしたが、高速バスよりも安い(?)LCCで仙台から関西空港までひとっ飛びしてから、電車を乗り継いで奈良へと辿り着きました。ホテルでは「いまなら。」キャンペーンで宿泊料金は割引となり、また支払った料金とほぼ同じくらいの地域クーポンを頂いたので実質的にはタダ? のような錯覚も受けて申し訳ないほど。初日はこれでもう夕方になるので、ホテルに近い興福寺へ。念願の「イケメン」阿修羅像を肇とする国宝の数々を見て、心を洗われる気持ちになりました。

    *興福寺阿修羅像(こちらは奈良新聞から)

 

 翌日の天気予報は雨。そのため雨が降る前にシカさんに会いに行きました。「しかせんべい」を買ったとたんグイグイとシカの群れに攻められる私と、そんな私の姿を見て腹を抱えて笑う配偶者。でも配偶者に「しかせんべい」を与えると、恐る恐るとシカさんにあげて、やっとこさ記念撮影! 固まる笑顔でなぜか勝利のVサイン(昭和!)のポーズを向けながらも、明らかに腰が引けているがわかり、昨今のベストショットとなりました(^^) 

   

 *肖像権の侵害にあたるため、表情はお見せできませんので、付き合ってもらったシカさんでご勘弁。

 次の日は予報とおりの雨模様。まずは配偶者の希望で、安倍元総理遭難の地に赴きました。政治的イデオロギーも信仰のカケラもない配偶者ですが、今年一番とも言える事件の現場は確認したいらしく、雨の中その場所に寄らせて頂きました。表示は「お花やお供えなどは、個人へのお気持ちとともにお持ち帰りください」のみ。私たちも写メをとることもせずに、現在の政治の混乱を思いつつ、故人に対して祈りを捧げてきました。

 雨もあり、時間がかかり道も不自由と思われる室生寺は断念して、急遽橿原神宮に変更。初代神武天皇を御祭神とするこの神社は、皇族の方が参拝するニュースでもよく見かけるもの。広い境内を玉砂利で敷き詰めた清廉な雰囲気は、伊勢神宮にも通じるものを感じます。しかも当日は皇室の行事では最重要の1つとも言える新嘗祭の日でもあり、橿原神宮でも近くの農家の方が収穫物を持ち寄って雰囲気を盛り上げていました。

 そしてもう1つ。神武天皇が東征した際に大和のここ橿原まで導いたとされる八咫烏(ヤタガラス)は、足が三本ある神獣で、蹴鞠上達を祈願する人の信仰となり、ひいては日本サッカー協会のエンブレムになったいわれがあります。ヤタガラスの本尊は熊野神社にありますが、こちら神武天皇を祭神とする橿原神宮も「縁続き」と勝手に判断。境内にサッカー色は皆無でしたが、当日夜に行われる日本対ドイツの戦に思いを巡らして必勝祈願(正直「できれば引き分けに・・・・」とちょっと弱気)をしてきました。

 

   

 *紅葉が美しく、奥はもやが立ちこめた橿原神宮北の鳥居

 

 そして法隆寺へ。広い敷地には外人観光客と修学旅行客であふれかえり、予想外の混雑。そんな中で目指すは「百済観音像」一直線。中学生の時は何の感動も受けなかったこの像は、見れば見るほど心を奪われて、時が経つのも忘れました。

     百済観音像(ウィキペディアより)

 

 (ちょっと間を空けて、次回PART2へとつづく)