小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

【コラム】 持続化給付金「詐欺」で思うこと

1 持続化給付金とは

 国の「持続化給付金」をだまし取ったとして、東京国税局の職員らが逮捕されました。年齢が24歳、おそらく主犯格のリーダーの手先だったのでしょうが、このような事件に関与したことにショックを覚えます。また去年は、経済産業省の元キャリア官僚2人が詐欺の罪で有罪判決を受けています。つい先日は、家族ぐるみで関与したとみられる約10億円の不正受給が発覚し、この件に関する「詐欺」は枚挙に暇がありません。

   

 

 「持続化給付金」とは、コロナの影響で収入が減った個人事業主や中小企業に対して、国が給付金を支給する制度で、コロナ禍の影響が出た2020年に実施されましたが、給付の条件は売上が前年同月に比べ50%以上減少した事業者で、個人事業主には最大100万円、中小企業には最大200万円が支給されました。

 

2 問題の所在

 ではなぜ給付金詐欺がこれ程広範に行われたのでしょうか。

 手続きは当時「拙速でも」素早い対応を目指したため簡素化され、申請から口座への入金まで全てネットで行えるため、元々不正は見抜きづらいと指摘されていました。

 対して詐欺グループは、各地でセミナーを開催して多数の申請者を募り、書類を準備して想定問答を用意して申請させます。入金したら申請人は一部を残し、あとは詐欺グループに渡して、累計して巨額のお金を騙し取りました。名義を貸した人たちも問題がありますが、ここでは話は広げません。

 そして給付金を申請したにも関わらずに、まだ受け取れずに廃業を怯える事業主の声を、マスコミも盛んに取り上げて「拙速」を助長していました。

 

3 本当の問題は?

 給付金の手続きを対応する組織は、経済産業省から委託を受けた一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ協)ですが、関与した企業は9次下請け(!)まで。サ協設立に関与した電通パソナトランスコスモスなどの「身内」に外注を繰り返しています。当然外注費が膨れ上がる計算になり国税の無駄となるはずですが、経産省は「不当な請求とは言えない」と述べて、この「中抜き」の議論を強引に決着しました。

www.tokyo-np.co.jp

 対して電通関係者は、一般社団法人を元請けにすることで予算監視の目が逃れやすくなる上、グループ全体では利益を最大化し、「電通が中心になって考案した利益率の良いビジネスモデル」と証言したそうです。

 そして財政面。国家財政の状況は何度もコラムで取り上げていますが、地方自治体である東京もその危機は免れません。かつては唯一、巨額な「貯金」を有し、オリンピックでもビクともしないと思われていましたが、コロナによる税収入の激減と、当初「国家や他の地方自治体を煽るようにに先行して、補助金を出しまくったために急降下してしまいます。

www.tokyo-np.co.jp

 

 国がコロナ対策として地方自治体に配られた「地方創生臨時交付金」が、感染症対策とはおよそ無関係な事業に使われ、12兆円のうち約11兆円分が使途不明状態になっていそうです。こちらも昔の東日本大震災による特別税で配られた財源の使い道などと同じく、いつか来た道・・・・

 

4 本当の「詐欺」グループは?

 持続化給付金は税金を原資として、事業主の「持続」を支援するために行なわれたものです。しかしその制度設計は余りにも杜撰で、オレオレ詐欺に比べれば、余りにも甘い「カモ」でした。これも結局政治家が、そしてマスコミが煽ったものでもあり、詰まるところ私たち国民の意識の反映だと感じます。

 持続化給付金は初年度で5兆を超える予算を費やしています。サ協への受注額は669億で、95%が電通に再委託され、経済産業省も容認しています。そして東京都だけでおよそ6500億円が消えました。地方創生臨時交付金は12兆が費やされています。

 昨年そして今回も、公務員が詐欺事件に加担しているとセンセーショナルに報道されています。しかし上意下達がはびこる役所の世界で、若い公務員がこのような「詐欺まがい」の出来事を、まるで「黒を白」と言い切るような対応を間近で見た場合、どのような心象風景となるのか容易に想像できます。

 そして今回は、その中のほんの一部が、一線を越えてしまいました。しかし、「1人を殺せば殺人犯だが、100万人を殺せば英雄(チャップリン「殺人狂時代」より)」扱いされるような幕引きをすることは、決してあってはなりません。

 巨悪は眠らせない。このような「若者」が今後増えないために、行なうべきことは明らかです。会計検査院は今回の給付金関連の工程について、入り口から出口まで厳しく精査して国民の目に明らかにして、場合によっては「こちらこそ」警察の手を入れる必要があると思われる事象です。

 そして立憲民主党さま。こちらでも「電通」や「パソナ」に負けないで、プロジェクトチームを設立して後世のために、今回の過程を明らかにしてください。

 

nmukkun.hatenablog.com

*サービスデザイン推進協議会となると、どうしてもこちらの作品を思い浮かべてしまいます。