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【あらすじ】
蓮見毬子は同じ美術部の先輩で憧れていた九瀬香澄と斎藤芳野に、演劇祭用の絵を描くために香澄が住む「船着き場の家」で合宿することに誘われた。毬子は憧れの先輩から誘われたことを素直に喜ぶが、親友の真魚子(まおこ)は、先輩たちを警戒する。さらに香澄のいとこの貴島月彦は、香澄に近づかないよう警告する。夏の合宿には琶子たち女子3 人に加え、月彦と彼の幼馴染の志摩暁臣も加わった。
合宿が始まると、10年以上前にこの家で起きた事件が、少しずつ会話の話題となっていく。かつて船着き場の家に住んでいた香澄の母親が、遺体となって発見された。同じ時期に暁臣の姉も、野外音楽堂の屋根から落下して亡くなっている。そして船着き場の家に住んでいた、毬子より年上の力ズコが引っ越していった。
戸惑う毬子に、暁臣は「毬子さんが、僕の姉貴を殺した」と告げる。毬子は何が真実で何が嘘なのか混乱し、少しずつ追い込まれていく。その一方で、5人が話すうちに10年以上前の事件が徐々に解きほぐされてし、やがて真実が明らかになっていく。
【感想】
本作品は女子高生版「ネバーランド」と評され、作者自身もあとがきで2作を重ねている。
主人公の蓮見毬子は、平凡ながら事件に巻き込まれて運命が翻弄されていく、少女漫画の主人公タイプ。対するのは毬子の憧れの麗しい2人。九瀬香澄は周囲に緊張感をもたらす魅力を発散し、斎藤芳野はみんなをリラックスさせる明るい雰囲気を放射する。毬子の友人の真魚子(空海の幼名と言及している)もそれなりに美貌を有しているが、毬子が2人に誘われたことに複雑な感情を抱いている。そして秀麗で人懐っこく、それでいて影を含む志摩暁臣と、常に斜めに構えた男らしい貴島月彦。非常にわかりやすい配役は、アニメ「エースをねらえ!」が透けて見える(原作のマンガは未読)。
第1章は毬子視点。タイトル「ハルジョオン」は、毬子が幼い時に船着き場の家に近くで見た、川のほとりに咲いていた花にちなんでいる。毬子が憧れる香澄と芳野のコンビは余りにも完璧で、他の人が入り込む余地がなく、真魚子の言葉を使うと「2人だけで完結」された関係。そんな2人を毬子視点で描きながら、過去の事件を振り返りつつ、最後に暁臣が唐突に琶子を殺人犯と告発する。
第2章は芳野視点に変わる。タイトル「ケンタウロス」は、事件の力ギを握っている犬の名前。外から見ると完結しているように見えるが、芳野は香澄との関係に不安を感じている。香澄の絵を一枚も書いたことがないと気づき突然描き始め、また香澄と越子が仲良くなれば、嫉妬までは至らないが、心が揺れていく。そしてこちらの章の最後は、第1章よりも更に衝撃を与えてくれる。
第3章は芳野と入れ替わって登場する真魚子の視点に移る。タイトル「サラバンド」は三拍子のクラシック曲で、芳野と香澄が一緒に聴いていたことに由来する。父を警察官に持つ真魚子を、芳野は容姿だけでなく「レモネードとレモンスカッシュの違い」の答え方から香澄を認め、受け入れていく。そして芳野は当時香澄と共有した秘密を元に、事件の真相を暴く。
終章「hushaby」は、赤ちゃんに「静かに寝なさい」とかける言葉。芳野が抱え込んだ秘密を毬子に告白することで、あとは芳野に「静かに眠なさい」と声をかけた。あとがきで作者は、「私が感じていた「少女たち」を封じ込めたいと思って書いた」と述べているが、それが成功したと思えると同時に「過酷な運命を彼女たちに背負わせた」と犠悔している。恩田版「禁じられた遊び」。
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*男子高校生版「蛇行する川のほとり」。こちらも取り上げようとしましたが、上手く表現できなかっためボツにしました。
高校時代は小・中学校と違い、受験というフィルターを通して、自分と同質性を持つ同世代の生徒が集まる。そこから自分の立ち位置をみつけ、他者との差別化を図っていが、他者は自分にはないものを持っていることがわかる。そんな誇りを、婿態を、計算を嫌悪しつつもそのうち憧れとに昇華し、その思いは大人になっても引きずっていく。
それまで不自然と感じたキスシーンを自然に思えるようになった、大人の入り口に生きた素敵な登場人物たち。作者は彼女たちを、夏の日の情景とー緒に封じ込めた。