小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

16 グーグル ネット覇者の真実 スティーブン・レヴィ (2011)

【あらすじ】

 1996年1月、スタンフォード大学の博士課程に在籍するラリー・ペイジセルゲイ・ブリン検索エンジンの開発を着手する。当時は、検索されたキーワードがそのウェブページに登場する回数によって各ページをランク付けし、検索結果として表示していた。ペイジとブリンは、ウェブサイト同士の関係を分析することで検索結果をランク付けする、改良された検索エンジンの理論を提唱した。

 1998年Google設立。翌年ペイジとブリンが会社を売り渡すことを画策したが頓挫。そして2000年にGoogleは検索されたキーワードと関係のある広告を表示するサービスを開始し、IT業界での快進撃が始まる。

 

【感想】

 恥ずかしながら、検索システムがネット社会の「覇者」となる構造を当初理解できなかった。また検索エンジンも、最初は「ヤホー」(by:ナイツ)が普及していたはずだが、これだけ急速にGoogleが席巻した理由もわからなかった。

 高い知性と豊かな想像力を持つラリー・ペイジは、「世の中を変える」ことに熱望していた。但しこれを本作品ではそのことを「野心」と書かれているが、私には「合理的でないものは許せない」性格と映る。そしてそれは織田信長の性格と政策を連想する。

 スタンフォードの大学院に入るオリエンテーションでペイジは「同じ年で2年先輩」のセルゲイ・ブリンと出会う。ロシア国籍のブリンは特に数学的頭脳が突出して、飛び級を繰り返していた。この2人が出会って、検索システムを最良の方向へと導くことになる。

  

 

  *ラリー・ペイジ(ビジネスインサイダージャパンより)

 

 システムのプラットフォームを創造するペイジ。そしてウェブから引き出された膨大な情報から法則性を見出すという、気の遠くなるような数学的課題に取り組むブリン。そして完成されたシステムは、最初から他を圧倒する内容だった。

 ティム・バーナーズ=リーが実現したWWW(World Wide Web)は、情報が世界に分散することを可能とし、その中でどの情報が重要で、求めているものかを素早く検索する必要が出てきた。

 

nmukkun.hatenablog.com

 

 従来は検索回数等で優先順位をつけたりしていたシステム(アルゴリズム)から、検索スピード改善のために、ウェブ上のページをできるだけ1カ所に集めて見たい人が登録して閲覧する発展した形となった。この最大規模がアルタビスタだが、これが公開されたのが1995年12月という。私から見ればつい最近である。

 その翌年から、ペイジとブリンは、検索の優先順位を言葉の一致と検索回数などではなく、リンク先などからそのサイトの重要度を計算するシステムの研究に没頭する。理論を提供したペイジに対し、ブリンはその数学的な才能を駆使して、「5億の変数を用いた」計算で、重要なウェブを算出していった。それはまるで空港の路線図のよう。重要な空港は路線が多く延び、多くの旅客機が発着する。

 これ以上の技術論は私の手に余る。専門家でない人向けに、

雰囲気を感じてもらえればと思う。2004年には株式公開して、それから数年後の2010年からは、「もう」独占禁止法の疑いが持たれ、集団訴訟にまで発展する。IT業界、いや世界に君臨するBIG5(Google、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)はもはや国家を脅かす存在となった。

 2019年12月、ペイジとブリンは共に最高経営責任者(CEO)を退任した。50歳を前に物事をやり遂げる。これも織田信長の人生を彷彿とさせる。

 

   

 セルゲイ・ブリン(フォーブスより)