【あらすじ】
現代エレクトロニクスを支える電子部品の材料となる高純度のシリコン・ウェハーを作る過程、そして、ウェハーに電子回路を焼き付けていく過程を、実際のDRAM(Dynamic Random Access Memory)工場内部の製造ラインの映像を交え、最先端の技術を描く。
第2回 トランジスタの誕生
一転して黎明期からの苦労話になる。ベル研究所でトランジスタが開発されて以降、量産に難航したトランジスタが大量生産するに至るまでのエピソードを紹介。日本企業が初期の頃、トランジスタ製作に悪戦苦闘するエピソードは、余りにも牧歌的。
第3回 石になった電気回路
2000年にノーベル物理学賞を受賞したジャック・キルビー、共同開発者でインテルを設立し、「シリコンバレーの主」と言われたロバート・ノイスなど、当時の伝説的な科学者が発明した、トランジスタ集積回路を取り上げる。両名のインタビューなど、貴重な映像も残されている。
*「シリコンバレーの主」インテル創業者の1人、ロバート・ノイス(ウィキペディアより)
第4回 電卓戦争
カシオのリレー式、シャープのトランジスタ式、テキサス・インスツルメンツ社のLSI式電卓。50万円を超えていた価格が短期間で1000円前後まで下がり、机の半分ほどの面積を占有していた大きさがカードサイズになるまで安く・小さく、そして大量に生産される過程と、その技術が後に集積されて日本が発展する礎になる様子を描く。
*樫尾家の兄弟の活躍を描く自伝
第5回 8ミリ角のコンピューター
電卓用LSIの開発を契機として、日本計算機(ビジコン)社員で「マイコンの父」と呼ばれた嶋正利らにより共同開発された「Intel 4004」などのマイクロコンピュータが誕生した様子と、その発達を描く。
第6回 ミクロン世界の技術大国
半導体製品を支える、チップの切断機械(ダイシングソー)、リードフレームの製造技術などの最先端の技術を、当時極秘で立ち入り禁止だった最新鋭の工場を取材して紹介する。
【感想】
書評のブログで恐縮だが、本作品は是非映像で観てもらいたい(一応、NHK出版から書籍化もされた)。「アメリカの物真似」と非難された日本の半導体技術だが、物真似だけではない、日本独自の技術と「モノづくり」の精神が技術者の中に脈々と息づいている様子が強く感じられる。また【あらすじ】に挙げた人物以外にも、西澤潤一を始め、貴重な人物のインタビューもたくさん挿入されている。
そして取材をした相沢洋ディレクターがいい。黒い肘あてをして、30センチ物差しを持って、「がらっぱち」な口調で説明している様子は、この最先端の技術を紹介する番組に、妙にマッチしていた。
この年にバブルが崩壊して、家電業界はその後、想定外のスピードで凋落していく。かつて「アメリカの猿真似」と言われて追いつき追い越せで進んできたのが、いつの間にか新興国に技術で追いつかれ、コストの面で劣勢に立ち、この頃のアメリカの立場になっていた。そんな未来が待ち構えているとは誰もが思わなかった時に、人々の努力が報われた「坂の上の雲」の時代を熱く描いた。