*これは阿部寛ならではのポスターです!
舞台を見たのは過去2、3回くらい。初心者向けのストーリーが解り易いものを鑑賞したことがありますが、聞いたことがないストーリーの舞台となると躊躇してしまいます。そんなわけで、ここ10年ほどはコロナ禍もあり、舞台観劇はご無沙汰となっていました。
ところで今回、阿部寛主演「ヘンリ一8世」の舞台公演が宮城県(名取市)にやって来ることになりました。そして助演として舞台監督も担当する吉田鋼太郎が出演することで、配偶者が珍しく興味を持って「観劇したい」と言い出します。とは言えチケット奪取の役割は(いつものように)私に押しつけられ、チケット売り出しの時間になったら、ネットでなかなかログインできない中(まるでワクチン接種の予約みたいww)、何度かのチヤレンジの上、何とかチケットをゲットしました。
ヘンリ一8世は16世紀に実在したイギリス王で、王妃キヤサリンの侍女アン・ブリンを寵愛するあまり、王妃キヤサリンと離婚を企てます。しかし神聖ロ一マ皇帝の縁者であるキャサリン王妃と離婚は難航し、結局はカトリック教会から破門されてイングランド国教会を独立させた「わがままな王」との印象がありました。
そんなスキャンダラスで「最強の王」を演じるのは阿部寛。「テルマエ・ロマエ」でも主演しましたが、威厳のある中世ヨーロツパの国王を演じさせたら、日本で1番「映える」と思える俳優さん。
そしてヘンリ一8世の懐深く入り込んで、讒言を王に吹き込んでは政敵を破滅に追い込み、私服を肥やす枢機卿ウルジーを演じるのは、この人しかいない(?)、吉田鋼太郎。前半はそんな登場人物の設定と説明が中心となり、正直ちょっと入り込めない状態が続いていましたが、後半になるとガラリと様相は一変します。
私服を肥やしているのがバレて、へンリ一8世の信頼を失い失脚する枢機卿ウルジー。
ヘンリ一8世を愛するも愛を失った身を嘆きながらも、王妃の座を守ろうとするキヤサリン。
政敵の企みで裁きの場に連れていかれるも、国王への忠誠を誓うトマス・クランマー。
そのクランマーの忠誠を信じて自ら裁きの場に現れて、政敵の陰謀を暴くヘンリ一8世。
吉田鋼太郎、宮本裕子、金子大地、そして阿部寛と順番に「見せ場」が回ってきて、それぞれの俳優が舞台に映える演技と、劇場内に朗々と響くセリフで、圧倒的な存在感を見せました。特に吉田鋼太郎は年齢を顧みず、身体を張った演技で舞台狭しと暴れ回ります。
そして舞台の最後はへンリ一8世とアン・ブリンの間に生まれた子が洗礼を受けるところで終わりますが、その子がエリザベス「1世」と、示し合わせたようなタイミングになりました。
2年前に公演予定だったシェイクスピア劇でしたが、コロナのおかげでやむなく中止に。それでもあきらめきれない俳優さんたちが吉田鋼太郎の元に集まって、スケジュールが多忙な阿部寛も何とか調整してもらい、今回の公演にこぎつけた様子。舞台裏の苦労は大変だったと思います。
鳴りやまないカーテンコールの中、何度も応えてくれた俳優さんたち。そして最後の最後に阿部寛と吉田鋼太郎の2人が、惜しむかのように「小芝居」をしながら舞台に残ってくれたのは、観客のツボを押さえた見事な演出。演劇シロウトの私たち2人も、とても満足できた観劇となりました。
*ヘンリー8世を中心に金子大地とアン・ブリン役の山谷花純。2人は「鎌倉殿の13人」で源頼家と側室のせつ役で共演しています。
(画像は全て「ヘンリー8世」のHPから)