小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

次は「経済小説」をくくります!

 昨年(2021年)の3月26日から始まったこのブログも、1年を過ぎてミステリーの書評を「10くくり✕20選」で合計200作品(プラス番外)取り上げさせていただきました。最初はおっかなびっくりで始めたブログですが、書評を書くことが楽しくて、そして何よりも皆様との交流にも支えられ、ここまで続けることができました。読者の皆様、改めまして本当にありがとうございました。

 ミステリーの分野も他に取り上げたい作品が、そして「くくりたい作家」もまだまだいますし、今後も新しい作品も続々と発表されます。しかしそれは将来(いつ?)に取っておいて、ここでミステリーは一区切りつけたいと思います。

 

 次回から取り上げるのは、タイトルにもある経済小説になります。以前は「男しか読まない」小説と言われたジャンル。ミステリーの分野で親しんでもらった皆さまの期待を裏切るようにも感じます。

 しかしなかなかどうして、20世紀末から始まった女性の社会進出もあり、女性を主人公として、もしくは重要なバイプレーヤーとなっている経済小説も、数多く発刊されるようになりました。

 ちなみに私が経済小説を読み始めたのは大学生の時。学生気分を謳歌していましたが、いざ就職活動を始めようとすると、社会や会社(今更ながら、この言葉が前後入れ替わりだと気が付きましたww)に対する知識が乏しい自分に愕然としました。そして勉強のために経済小説を読み始めると、これがもう人間模様の「るつぼ」で、それから思いっきりハマりました。

 

 私が考えるに経済小説の楽しみは、以下の3点に絞られると思います。

 第1に、本当は身近な商品や商店、そして業種の裏側が垣間見られることです。現代人が一般社会で生きて行くには、必ず消費活動との繋がりがあります。その商品や身近な店舗など、研究や生産、そして販売にどのようなドラマがあるのかを、小説を通して知ることができます。

 第2に、人間のドラマを知ることができます。会社組織に組み込まれて、その中で仕事だけでなく人間関係に巻き込まれて、そして運も作用しながら揉まれていく企業人を赤裸々に描くことで、時にスカッとして、時には運命を呪う「悲喜劇」を数多く見届けることができます。家族や周囲にも影響を及ぼすドラマは、会社人間でない方も是非知って頂きたいと思います。

 第3に、立志伝があります。志を持った人間が数多くの難関をくぐり抜けて、会社を創業して成長させる物語。その過程は現代における戦国武将のようでもあり、成功の物語として、時に反面教師として人生に示唆を与えてくれます。

 

 最初は手探りで始めたブログですが、1年有余を経て「何があろうと(?)」当面は続けていく決意がつきましたので、今回は今後の投稿予定をこの場で記したいと思います。作家別、業種別に分けて、戦後日本の経済を作品の発表別でなく、作品の舞台となる年代順に掲載する予定です。これで時系列の縦軸と、業種の横軸を交差させて、多少なりとも戦後の日本経済界を網羅できるかと思います。

 

1 城山三郎清水一行 経済小説10&10

 経済小説の第一世代で、この分野を切り開いた2人。2人とも多くの作品を発表していますが、何しろ経済小説は「アシが早い(賞味期限が短い)」。その中で、2人の特徴的な、その後の経済小説界に大きな影響を与えた作品を10作品ずつ絞って取り上げさせていただきます。

     

  城山三郎清水一行(清水の孫は竹内由恵アナ)

2 高杉良 エールから呪縛への20選

 経済小説の第二世代。経済小説の中興の祖として、そして現在も活躍している高杉良。その作品群は初めは板挟みされるミドルに対するエールが主でしたが、バブル崩壊の頃から企業の「闇」を暴く作品にシフトされて行く様子を取り上げます。

      *高杉良(共同通信)

 

3 製造業・建設業界 20選

 敗戦後間もなく日本経済を牽引する役割を担い、高度経済成長を演出した重厚長大産業。その凋落は早く、その後引き継いだ自動車産業も多くの困難が待ち構えます。その盛衰を同じく「政治産業」といわれた建設業や不動産業なども交えて取り上げます。

 

4 家電業界・IT産業 20選

 日本経済の象徴とも言われた家電業界。当初は象に対するモスキート(蚊)と言われるほどの力の差をはねのけて「電子立国」を築きあげましたが、歴史は繰り返して今度は日本が追い越される立場となります。パソコンからITの歴史も交え、技術を主とするノンフィクションもいくつか取り上げます。

 

5 金融業界(銀行・保険)20選

 スマートに見える金融業界ですが、お金は商品と違って競合他社と差がないため、競争には「人間」が全面に出てきます。時に醜悪な面を見せる金融業界で、バブルとその崩壊における金融業の内情とともに、その時代を挟んで金融を巡る人間がどのように変化していくかも、「直面」することになります。

 

6 流通・サービス業界20選

 以前は官僚に対して「民僚」と言われた商社マン。その過酷な仕事振りから、スーパーやデパートなどの流通業界を中心とした盛衰、そしてマスコミ業界なども含めたサービス業も取り上げます。

 

7 財界人の「一代記」20選

 江戸末期から現代まで、「四大財閥」を始め財閥を築いた戦前の経済人から、グループ企業を担いビックカンパニーを築いた戦後の創業者たちを取り上げて、成功者と言われた財界人の「個」を取り上げます。

 

8 小説で読み解く戦後日本経済史(①~⑦)

 「くくりの区切り」として記事を入れる予定です。日本経済史の変遷に経済小説を絡ませて、戦後日本の経済史を綴っていきたいと思います。

 

 今までと同じペースだとおよそ1年続くと思われるこのジャンル。まあ気軽に読んでいただきたいですが、その中でも私たち世代の経験を含めて伝えることで、若い方が戦後日本の経済史、産業史に改めて興味を示し、仕事にそして将来に生かしていただければ、これに勝る幸せはありません。 

 改めまして引き続きのご愛顧、よろしくお願いします。