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【あらすじ】
主人公は宇田川亮太、32歳の巡査部長。念願だった警視庁刑事部捜査一課に配属される。
新入りで教育係である51歳の警部補・植松義彦に怒鳴られいつも目の回る忙しさ。そこに宇田川が初任科で同期だった大石陽子と蘇我和彦が絡む。大石は刑事部捜査一課特殊捜査係(SIT)に異動した。
一方の蘇我は公安に所属していたのだが懲戒免職となった。但しそれは形式上の擬装であり、公安の特命を受けて潜入捜査に関わる事案を手掛けているのだろうと思われた。宇田川は有能な同期が特殊な領域で活躍していることに劣等感を感じつつ、一方同期の絆で結ばれている。
ある日、大石陽子は宇田川と先輩の植松、そして植松の同期の土岐と会食し、大石は出向することになったと彼らに告げる。その中で特殊任務につくことを暗に示した。そして事件が発生するが、潜入捜査中の大石が容疑者となって浮かび上がる。
【感想】
刊行された期間は長いが、3作で完結したシリーズ。個人的には心残りもあり残念である。
第1作「同期」は、宇田川と蘇我の2人の同期を描く。組事務所へのウチコミ(家宅捜索)の助っ人に召集された宇田川は、逃げ出した組員を追跡する途中銃撃される。その危機を救ったのが「偶然通りかかった」同期の公安警察官蘇我。この事件の3日後、突然蘇我は懲戒免職になり、まったく行方知れずになる。
宇田川に発砲した組員が殺害され特別捜査本部が立ち上がるが、公安と刑事で方針が対立する。そんな中蘇我和彦が重要参考人として浮かび上がる。
第2作「欠落」は2人の同期に大石陽子が加わり、女性を挟んで男二人と座りがいい配置に。マンションで主婦を人質にとった立てこもり事件が発生、主婦と引き換えに大石が人質となるが、犯人は大石を連れて車で逃走してしまう。そんな中姿を消していた蘇我から連絡が入り、大石が連れ去られたのではと心配する電話だったが、宇田川は自分たちの事件に対して探りを入れてきたのではないかと疑う。そして事件は公安が仕切るようになる。
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本シリーズは同期を描くのに刑事と公安を設定したため、「警察小説あるある」の刑事畑と公安の対立がベースとなっている。但しそこは今野敏。公安を単なる「薄気味悪い」存在に限定せず、所々で蘇我が宇田川に助け船を出す形で「同期の絆」を描いている。
第3作にあたる本作品は、第2作から登場した大石陽子がまたまた活躍する。有能な警察官だが、第2作そして本作品でも拉致されて救出される役割で、これまた今野敏が描くヒロイン像にふさわしい。潜入捜査で大石が消息不明になったあと、臨海地区で暴力団関係者と思われる刺殺体が見つかる。拉致された大石は、現場の監視カメラ映像に、同期だけにわかるメッセージを使って「同期の絆」を表している。それにしても大石陽子の名前の由来が、サイン会に来た女性警官の名前というのが面白い(そりゃ、これだけ作品を書いているとねえ・・・)。
警察という組織の中で、最初は同じ研修を受けた同期が、経験を重ねることで次第に違う環境に移される。これはどこの会社でもある話だが、このシリーズでは、同期は「消息を絶つ」設定になっている。見えなくても感じる絆を描いたこのシリーズは、深い味わいを読んだ後与えてくれる。
それにしても死体発見現場が臨海署で、登場するのが安積ではなく相楽というのが可笑しい。また「隠蔽捜査」の主人公竜崎ではなく伊丹らしき人物を刑事部長として登場させている。「FC2」では、竜崎が転出した直後の大森署を舞台にしている。急所をはずしながらもツボを押さえるやり方は、「空手家」のなせる業か?
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