今週のお題「赤いもの」
「赤」で印象に残っているものと言えば、私は映画 「シンドラーのリスト」を思い浮かべます。
「シンドラーのリスト」より
主人公のシンドラーは会社経営者としてナチスにすり寄って、ユダヤ人を奴隷のように使っていましたが、人ごみのなかに赤い服を着た少女を見つけます。モノクロの中に突如として現れる鮮やかな赤い服。その光景を見て、言葉はありませんが、シシドラーの表情が大きく変わります。この「赤いコートを着た少女」を見ることで、シンドラーは今までの自分を見つめ直すきっかけとなります。
物語は進み、ユダヤ人の大量虐殺が進む中で、シンドラーは荷馬車に運ばれる遺体の中にあの赤い服を着た少女を見つけます。子供ですら無残に殺害される現実を見せつけられます。その姿を見て、シンドラーはせめて自分の従業員のユダヤ人だけでも命を守ろうと決意します。モノクロが中心の画像の中で、「赤いコートを着た少女」の鮮やかな赤が、強烈な印象を与えます。ここで「赤」は命を司り、決意を表す意味の赤と想像します。
スティーブン・スピルバーグ監督は、日本映画界の巨匠、黒澤明監督から強く影響を受けています。この黒澤明の映画「天国と地獄」は「シンドラーのリスト」に先行すること約30年、赤を印象つけたパー トカラーを巧みに利用しています。誘拐事件の身代金強奪で完全犯罪を狙った犯人に対し、行き詰った捜査が打開されるきっかけとなったのが「赤い煙」。身代金を入れるために使われたカバンが燃えると赤い煙が出るしくみを利用した、事件の解決を象徴する「赤」でした。パートカラーは、「赤」を使うのがインパクトが強いのですね(映画「踊る大捜査線」でも、「天国と地獄」のオマージュで煙突から出る赤い煙を描いています)。
「天国と地獄」より
例えば梶井英次郎の 「檸檬」。まるで手りゅう弾の形をした果物を「爆弾」に例えるのは、狂気が宿るような鮮やかな レモンイエローでなければならず、リンゴやイチゴでは成立しません。「赤」とは役割が異なります。
もう1つ重要な「赤」があります。私の人生を変えたと言ってもいい「赤」。12歳の時読んだ「赤毛組合」の感激が忘れられずに、本を読む習慣が現在まで続き、このブログを書くまでに至っています。こちらは既に投稿済なので、参考までに。
「赤いコートを着た少女」のような悲劇が今後起こらないことを祈ります。