小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

番外 エラリー・クイーン パーフェクトガイド

f:id:nmukkun:20210618185233j:plain ぶんか社文庫 飯城勇三編)

 

 1905年生まれの従兄弟同士。フレデリック・ダネイは広告会社で、マンフレッド・リーは映画会社で働いていました。20代前半の時、ミステリーの懸賞募集の広告を見て2人は創作を決意します。1928年の大晦日、締め切り日のギリギリに作品は完成して応募し見事当選、その後紆余曲折がありましたが、翌1929年に「ローマ帽子の謎」が発刊されます。それは以降40年に渡る「絶え間のない緊張の中での」従兄弟2人による共同作業がスタートしたことも意味します。

 本作品は2人のエラリー・クイーンの生誕100年を記念して2005年に、私が新婚の時代に刊行されました。本屋で見てすぐに心を奪われましたが、結婚してお小遣い制になり、また保管場所も考えて購入するのをためらっていたところ、配偶者から「それ位買ってあげるわよ」と言われ、子供のように喜びました(というか子供そのものww)。以来、今でも枕元に置いて、寝る前に時折眺めています。

 

 全体にクイーン愛があふれた1冊。そして圧倒する「質と量」。巻頭に飾られたカラーの初刊本一覧でまず感動します。クイーンの「正典」の完全ガイドと、クイーンらしい(?)ひねりの効いた、各作品にまつわるコラム。クイーン(ダネイ)のインタビュー記事。この1冊につぎ込んだ労力は、執筆協力者の面々も含め、想像するに余りあります。ただのガイド本と一線を画すのは、一読した時からビンビンと伝わって来ます。

 そして日本の新本格を中心とした作家の面々による、これまた熱いクイーンのアンケートに対する回答が充実して、何度読んでも楽しめる作品となっています法月綸太郎のクイーンへの想い「三つ子の魂百まで!」は、日頃クイーンとなると蘊蓄(うんちく)が止まらない作家だけに、突き抜け感がたまりません(笑)。惜しむらくは、クイーンの「正典」に対するガイドの紙面が少ないこと、と思ったら、角川文庫の新訳の解説で飯城勇三は、解説の枠を超えた分量と熱量で熱く語っています(笑)。

 

2人のクイーンがお互いぶつかりながらも、1つの作品を創作する様子が描かれています。

 

  本作品が刊行されてから、ちょうど各出版社でクイーン作品が新訳で刊行されるようになりました。本作品に接して新訳でクイーン作品を再読すると、昔読んでいた文章と比較しても読み易くく、また印象が初読とは異なる作品もありました。

 そして私の記事を読むとおわかりの通り、再読する度に初読の時の当時10代だった自分を思い出します。皆さんも自分の思い出に直結する本があると思いますが、私の場合はクイーン作品がその多くを占めました。そして再読した時に甦った懐かしさが、ブログを始めるきっかけの1つになりました。

 まだ読んでいない人で「エラリー・クイーン」に興味を持った方はもちろん、昔に読んだことがある人も是非本作品を(そして微力ながら私のブログを)参考として、興味を持った作品からでいいので、1度クイーンの世界に触れてもらいたいと思います(でも、できれば刊行順がいいけど・・・・)。

 

 なお「クイーン後期問題」ほどではありませんが(笑)、クイーンファンを二分する「エラリー・エラリイ」の表記問題と、国名シリーズの「謎・秘密」問題について。最初は創元推理文庫で読んだので、「エラリー」「謎」で統一させていただきました。

 最後にエラリー・クイーンで一番好きな文章を1つあげます。

 それはクイーンが編集する「シャーロックホームズの災難」での「まえがき」。

 20ページに満たないまえがきの、その内の6ページほどの部分ですが、「クイーンの片割れ」と表するクイーンが記したシャーロック・ホームズとの忘れがたい出会い。私と同じように12歳の子供が初めてホームズに触れ、一夜にして「冒険」を読み終えてホームズの虜になった様子を、ノスタルジックな雰囲気とともにファンタジーにも包まれた文章で描かれています。

 

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  クイーンの国名シリーズを読んだあと、13歳の私はミステリーのハウツー本を参考にして「傑作」と呼ばれる作品を漁ることになりました。けれどもそこには欠点が・・・・

 もう昔はネタばれのオンパレード! その1番の被害者がアガサ・クリスティーで、10代の頃いくつかの作品を読みましたが、ネタばれと登場人物の描き方から、どうも入り込めませんでした。

 ところが最近になって復活、のめり込みました。100作品を超えるクリスティー作品ですが、次回からはその中から選んだ「アガサ・クリスティーの twenty」をスタートします!