小説を 勝手にくくって 20選!

ジャンルで分けた20選の感想をつづります。

       書評を中心に、時たま日常を語り社会問題に意見します。ネタばれは極力気をつけます。        

【コラム】 池江璃花子選手のツイッター

 時事ネタからは遠ざかるはずが、今回池江選手のツイッターを読んで感じるものがあり、「また」書きました。

 

1 今回の出来事の概略

 コロナに対する政府の緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置に数値的な効果が見られず、東京オリンピック開催について未だ明確な方針がない中で、「影響力がある」と思われる水泳の池江璃花子選手のSNSに、東京オリンピック代表の辞退や、開催反対に賛同を求めるコメントが数多く寄せられたという。

 白血病から奇跡の復活を果たし、先日オリンピック代表の座を掴んだ姿は全国民が感動し、「影響力がある」ことは間違いない。恐らくコメントを投稿した人たちも、この状況でオリンピックを開くことの危うさを考えて、決断しない政府にしびれを切らして、効果的な方法はないかと考えた上、「善意」で動いたものだろう。

 但しこの動きに違和感を抱いたのは私だけではあるまい。池江選手に限らず、オリンピック出場選手(もしくは出場を目指す選手)に、第3者がオリンピック出場辞退を促すことは、選手のそれまでの努力を否定することになり、オリンピック開催反対となると話が大きすぎて、選手個人に求めるのはあまりにも酷。

 5月7日には池江選手が自らツイッターで、「東京オリンピックの中止を求める声はわかる」としながらも、「それを選手個人に当てるのは苦しいです」とコメントした。恐らくこのコメントで、池江選手(並びにその他有名選手)へのオリンピック辞退や中止運動に関する投稿は収まると思われる。 

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 写真:時事通信社

 

2 今後の心配

 しかし私は、今後の動きに不安を抱く。あの池江選手に「苦しい」と言わせた(本人は全く悪くない)、コメントを投稿した人への攻撃に今後移るのではないかと。

 池江選手に投稿した人への攻撃材料は「善意」である。選手を苦しめてはいけない、訴える相手が違う、行動するならば自分ですべきだ、云々。

 但し池江選手に対して投稿した人も「善意」で行ったもので、自分の利益にはならない(少なくとも直接の利益は受けない。ただし組織的ならば別)。また池江選手を苦しめる結果になるとは思わなかっただろう。それはそれで自省して欲しい。

 但し他者が投稿した人を攻撃するのは止めて欲しい。なぜなら池江選手に投稿した人も、投稿した人を攻撃する人も「同類」なのだから。

 

3 他者を攻撃する人たち

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 2005年の小泉内閣郵政選挙で、広告代理店が縦軸をIQ、横軸を(構造改革に対する)意欲と設定して、4象限で支持層を分類した【図A】。

 A層はいわゆる「上級国民」でB層への影響力が強い。

 C層は知識が高く、世の中に提言をする人々(三浦瑠璃、ちきりんさんなど)。

 D層は「負け組」として、残りのB層に対してのアピールが不可欠と提言した。

 IQの高い、低いを軸にして、また「負け組」と定義するなど「露骨」な分析だが、今ではマーケティングでもよく応用されているらしい。

 ところがこの4象限は説明するには便利だが、分布や位置関係などで誤解を招きかねない。そこで私がデフォルメして作成したのが【図B】。B層は一定量の知識を有していると判断。そしてマスコミの情報に影響されやすいが、SNSの発展もあり、世論の「半歩先」を行こうとしている意欲がある。このB層(構造改革支持層)が民主党政権を作り、アベノミクスを支援し、そして今回東京オリンピック開催の延期・中止すべきと感じている。

 昔、経済的な「中流意識」が流行したが、現在では精神的な「中流」が大半を占めている(と、B層のど真ん中に位置する私はおもう)。そこで「半歩先」を行こうとする意欲が強く他者に先んじようと、情報の裏付けを取らずに「拡散」する場合も出てくる。そのため他の層に対しての攻撃はもちろんだが、同じ層(?)の中でも対立が止まらない。

 

4 結論

 2019年夏に起きた「常磐自動車あおり運転事件」で、暴力を振るった男の同乗者、いわゆる「ガラケー女」に間違われた女性は、多数の誹謗中傷をSNSなどで受け精神的に追い詰められた。

 まずは同様のデマをSNSに投稿したとして愛知県の元豊田市議に対して110万の慰謝料等請求訴訟を申し立て。東京地裁は名誉棄損を認め、33万円の賠償を元市議に命じている。次にユーチューバーにも110万円の請求訴訟を申し立てている。

 これらも元々は当初の「拡散希望」のSNSを見て、情報の裏付けを取らずに「善意」で拡散したもの。但しその「善意」は自己の価値観に基づくもので、他者には他者の価値観に基づく「善意」がある。それが一致するとは限らない。

 この件で騒ぎを大きくするのは、ツイッターの内容から見ても池江選手の本意ではない。結論。明日から始まる平日の「情報」番組で、この件を延々と議論して欲しくない。(今回の心配が杞憂でありますように・・・・)