今回「シャーロック・ホームズ20選」と称して作品をコメントしてきましたが、自分でも想定外だったのは「殿堂入り」の5点を除いた15作品のうち半分ほどが、当初予定していた作品から変更となったことです。再読するうちに、あらすじ以上のコメントが浮かばす断念した作品あり、「元ネタ」の作品に触れるとネタばれになりそうな作品あり、再発見して興味を持ち、当初の予定と違って選出した作品あり。ホームズ作品は読むたびに新しい発見があることを、改めて感じました。
同じような理由で、最初からこの20選に選ばなかった作品があります。まず長編4編。そしてホームズの探偵人生のマイルストーンとなった5作品。すなわち以下。
・グロリア・スコット号(ホームズが手掛けた最初の事件)
・マスグレーヴ家の儀式(ホームズが探偵業を初めてごく初期の事件)
・最後の事件(ホームズが宿敵モリアティ教授と戦い、ラインバッハの滝に落ちた事件)
・空家の冒険(死んだと思えたホームズが生還して取り組んだ事件)
・最後の挨拶(第一次大戦前夜、ホームズが最後に活躍した事件)
これらも、あらすじ以上に私が付け足すことは困難(野暮?)と判断したものです。このように、取り上げなかった作品の中にも私の好きな作品が数多くあり、理由は全て、私の筆力不足が原因となっています。
なお題名は、日本で一番流通している新潮文庫版の題名を中心に記載しました。文中の引用文は主に河出文庫版から引用させていただいています
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中学の入学祝いに買ってもらった新潮文庫版ホームズ全集。その後も何度か読み直し、またグラナダTV制作のテレビ版ホームズに胸を躍らせ、小林司・東山あかね共書のホームズ評論書およびその翻訳本を見ては、ホームズの世界に惑溺(わくでき)しました。
あれから40年以上たち、入学祝いに自分のへそくりからお金を出してくれた父も、一緒に本屋に買いに行ってくれた母も、今はもういません。新潮文庫のホームズ全集は何度も読み返しましたが、年を経るにつれてページが日焼けして、所々紙がはがれてしまい、結局数年前に「断捨離」の運命になりました。ほかにもたくさんの本を処分しましたが、ホームズ物だけは未練が残り、結局挿絵が全て揃っており、脚注や解説が充実している河出文庫版を買い揃えました。
最近は読み返す機会は少なくなりましたが、今回久しぶりに読み返しました。そうすると12歳の頃の自分が布団にくるまって、夢中になってホームズの物語を読んでいる姿を、まるで天井裏から見守っているような気持ちになりました。これからホームズを読む人は、ぜひ「長いお付き合い」をしてください。
私にとってのホームズの魅力を最後に書き記して、「シャーロック・ホームズ20選」シリーズを締めくくります。
子供の頃に読むと、大人の世界をのぞくことができ、
成長してから読むと、その世界観に惑溺され、
年を重ねてから読むと、子供の頃に戻ることができる。
(私のホームズ体験はここから ↓ 是非お立ち寄りください!)
さて、中学の入学祝いに買ってもらったホームズ全集を読み終えた12歳の私が、次に目に留まったのは運命の書「Xの悲劇」。次回からは「エラリー・クイーン 黄金の二十」となります!